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C. 国境通過の概況

(1) トランジット輪送

域内トランジット輸送簡便化の合意はされたが、その「理想」と「現実」は大きく乖離しており、以下のような諸点から、実態としてEUのように簡便に国境通過輸送ができるわけではない。

 

◎自国港湾の優先利用

域内トランジット輸送の簡便化合意の目的は、外国貨物の陸路通過を容易に行えるようにすることである。しかし、内陸国であるラオスを除いては、すべてのASEAN諸国は自国港湾の整備を進めており、陸路経由による貨物の増加は、自国港湾取扱量を減少させる側面を持つので、「港湾を経由して貨物の輸出入を行うのが原則」という理由の下にトランジット輸送を認めないケースが多い。

例えば、タイを経由する外国貨物の輸送について、現状では、ラオスは当該輸送を認めている(ただし、認可を受けた特定企業のみという条件がある)ものの、カンボジア、ミャンマーはそのような輸送を認めておらず、自国港湾使用を優先させている。

 

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◎関税デポジットの必要性

トランジット輸送がASEAN全体で円滑に行われるためには、ASEAN共通の保税輸送システムが必要であるが、現実にはそのようなシステムは存在していない。したがって、貨物が通過国に入る際に関税をデポジットし、通過国を出る際に返還して貰う手続きをとらざるをえない。例えばシンガポール/タイ間でさえマレーシア通過の際に関税デポジット手続きが必要であり、その煩雑さや不透明さ等から、今のところ、陸路によるトランジット輸送を積極的に行っている業者は現れていない。

 

 

 

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