日本財団 図書館


I. ASEANの域内輸送

A. 目的

近年、日系フォワーダーの顧客である日系荷主企業のアジア進出は、もはや企業規模の大小を問わない大きな流れであり、今後も持続するものと考えられる。これに伴って、これまで日系フォワーダーのビジネスの主流であった日本発着の国際輸送が相対的に減少し、代わりにアジア発着並びにアジア域内の国際輸送が増大することが予想され、中でもASEAN域内輸送の動きがきわめて活発化する可能性が高い。

現在のところ、ASEAN域内輸送の多くは、船舶で行われている。しかし、今後は、域内輸送時間の短縮化を求めて自動車輸送や鉄道輸送へのニーズが生じることは確実と考えられ、すでにシンガポール/マレーシアのように、貨物の積み替えのない同一車両での国境通過が認められて、自動車輸送が進展しているところもある。だが、多くのルートで陸路による国境通過の実態は明らかでない。

そこで、今回は日系企業が多く進出しASEANのなかで、経済的にも大きな役割を占めるタイを中心に、内陸輸送による国境通過の実状を調査することとした。

 

B. 制度面でのASEAN域内物流の自由化

ASEANの経済発展のためには、域内物流の円滑化が大きな課題の一つである。地域統合の「先輩」であるEUでは、域内を発着地とする貨物輸送については、すでに国境通関が廃止され、域外を発地とする貨物輸送においても、その域内輸送部分に関して保税輸送システムが確立されている。

このような事例に鑑み、ASEAN諸国も、外国貨物の域内移動の簡便化を図ることを目的として1998年にトランジット貨物(注)の簡便化についての協定(ASEAN Framework Agreement on the Facilitation of Goods in Transit)を締結した。

 

(注)この協定にいうトランジット輸送の定義は、第3条a項によると

「1つあるいはそれ以上の(ASEAN)加盟国の領土を通過し、発着地が通過領土の外にある輸送のこと。通過中における積み替え、保管、仕訳や輸送形態の変更の有無は問わない。」

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION