4. Extreme Value Predictions
5. Conclusions
2.については現時点での理論的推定法の実用性について、本委員会の目的との関連で行ったレビューの結果が報告された。結論としては、極限荷重推定のための非線形計算法は未だ確立されておらず、依然、ストリップ法が最も優れた実用的手法であるということが述べられた。3.の比較計算については委員の所有する非線形要素の影響を調べる計算コードを使って、同じ状態での大波高波中での極限波浪荷重のシミュレーション計算を行った結果が報告された。ほとんどの方法は、ストリップ理論に基づく非線形時間領域シミュレーション計算法であった。参加したのは9機関であった。計算ではスラミング等の影響が調べられた。比較計算に供する船型としては高速船型であるS175船型が使われた。この計算の検証のための実験結果としては、わが国(船研)や米国(DTMB)での実験結果が選ばれた。これらの比較計算に依れば、計算コードによる偏りはあるものの、定性的にも定量的にも同じような荷重を与えること、また実験結果とも良い一致を示していることが報告された。4.の章は極限荷重の統計的性質を定めるための手法についての検討結果であるが、そこではPseudo Transfer Function法が有効であるとの感触を得たことが報告された。
次に討論に移り、最初に指名討論者のY. S. Shinが立ち、線形理論による推定の限界、最近の3次元計算法の有効性、時間領域シミュレーション計算の問題点についての討論がなされた。これに引き続きwritten discussion、oral discussionが幾つかなされ、最後にそれらすべてに対する委員会としての回答が行われ、会議を終了した。本委員会はこの総会で任務を終了し、廃止となった。これに代わって疲労荷重に関するSpecial Task Committee VI.1が設けられることになった。(渡辺巌)
Special Task Committee VI.2 Ultimate Hull Girder Strength
本委員会は、委員長の矢尾教授(大阪大学)以下、Dr. Astrup (ノルウェー)、Dr. Caridis (ギリシャ)、Dr. Chen (米)、Prof. Cho (韓)、Dr. Dow (英)、仁保博士(三井)およびDr. Rigo (ベルギー)の合計8名よりなる。本委員会は、新しい性格の特別任務委員会(Special Task Committee) であり、船体の縦曲げ最終強度計算手法の評価と、設計に於ける適切な計算手順の提案がその任務となっている。
そのため、既存の縦曲げ最終強度解析法に関する文献調査の他に、甲板および船底外板を想定した90体の防撓パネルの圧壊強度および5種類の船体の縦曲げ最終強度に関するベンチマーク計算が実施された。また、組合せ荷董の影響、各種因子に対する縦曲げ最終強度の感度、設計の観点から見た縦曲げ最終強度などに関する考察が行われた。
委員会報告書の目次は、以下の通りである。
1. Introduction
2. Existing Methods of Analyses to Evaluate Ultimate Hull Girder Strength
3. Benchmark Calculations on Element Characteristics
4. Benchmark Calculations on Ultimate Hull Girder Strength
5. Effects of Load Combinations and In-service Damage on Ultimate Strength
6. Sensitivity of Ultimate Hull Girder Strength with Respect to Various Factors
7. Consideration on Ultimate Hull Girder Strength from Design Aspect
8. Proposal of Technical Guide to Assess Ultimate Hull Girder Strength
9. Conclusions
大坪議長の司会のもと、矢尾委員長から報告書の概要が説明された。防撓パネルの圧壊強度や船体の縦曲げ最終強度に関するベンチマーク計算の結果にはばらつきが見られたが、それぞれ適用された計算方法の特徴を注意深く検討すればばらつきの原因が推定できること、また、計算結果の精度は、適用した計算方法でどこまで実際の崩壊挙動が再現できるかに依存することなどが説明された。さらに、各種計算手法を15項目に渡るCapabilityの観点および想定した各Capabilityの重要性の両面から評価し、現状では、計算で求められた要素平均応力―平均ひずみ関係を用いたSmithの方法が最良の詳細計算手法であるとの結論が示された。最後に、設計においては設計者のレベルおよび設計段階に応じて、詳細解析と簡易計算を使い分けるべきとの提案もなされた。