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2-11 鮮度保持試験

 

1. 深層水について

従来より深層水は、深度1400mから3000mの深層に存在する海水のことを意味する。

深海とは、通常深さが2000mよりも深いところを言うことが多いが、はっきりした区別がなく少し浅い海域でも深海と言うこともある。

しかし、1000mよりも浅いところを深海と言うことはほとんどない。英語の辞書に「abyssal」と言う言葉は、600mよりも深いところと定義している。海洋学ではこれよりも深いところを表すのに用いられているので、深層を深さ1000m以深とすると、現在取水している沖縄海域の深層水は、海洋学で言う深層水に適合している。

深度1000m以深の海水は、太平洋全体を通じて水温も塩分も変化が非常に少なくて、ほとんど一様な海水で占められている。

従来の考えでは、深層の海水は数万年以上も前から深部に止まっているものと考えられていたが、近年に至って深層水の更新年数(新しい海水によって置き換えられる年数)は案外少なく、数千年程度とされている。深層水は、清浄な栄養塩、ミネラルを含んでいるので、この資源特性を水産分野に活用すればそのメリットは計り知れないものがあると思われる。

海洋の大循環は、表面海水の大循環と垂直断面における大循環に分けられる。深層水は、後者に属する。図2-62は、大洋の中央温帯域の水温及び塩分の垂直分布と対流圏・成層圏を示したものである。深層流・深層水は、深度1400m〜3000mを示している。図2-63は、大洋断面における環流系を想定したものである。

成層圏は場所によって異なるが、先ず500m以深の深層で、ここでは渦流が少なく流れは極めて緩やかでほとんど層流をなしている。

対流圏は表面より数百mまでの範囲で渦動及び対流のため混合が行われ、水温、塩分等の時間的変化が観測される。対流圏の海水は、熱帯表層水とその直下にある亜熱帯次層に分かれ、温水環流系である。

成層圏は、極流の最上層の一部が潜流したもので、水温は急降し塩分は最も少ない。この海水は、亜熱帯中層水で極より赤道に向かって流動している。この中層水の下に深層水が存在する。これは塩分が前者よりやや多く、赤道から極に向かって流れる。最下層は極底層水であって、極底からの冷水が赤道に向かって海底に沿って徐々に流れている。成層圏は寒水環流系である。

 

 

 

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