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2-5 深層水混合による植物プランクトン(有機物)増殖・増加量の把握

 

1. はじめに

沖縄県糸満沖約30km南方の海ヤカラ1号周辺の約1km3にわたる海域は、人工衛星で観測できる程のプランクトンが発生し、漁師が注目するほどの魚場と化していることが明らかにされつつある。さらに、中層水、深層水の取水管のどちらか一方が切断すると、そこはプランクトンが発生しないという。この結果は非常に重要である。海洋生物学者は肥沃化には膨大な量の栄養塩を含む海水が必要で、そのために200m以深の海水が重要であると言い続けてきたからである。

有光層以深の海水は窒素、隣、珪素等の栄養塩を多く含み、海域の肥沃化にはその海水を表層海域に放流すれば良いと言えるほど単純ではなく、何層もの深さの海水を湧昇させることが重要であると考える。

本研究は、海の食物連鎖の基礎となる植物プランクトン増殖を、海ヤカラ1号周辺海域の海水状態を実験室に再現し、必ずしも中層水、深層水の濃度に依存しない方法により植物プランクトンの増加があり得る現象確認を行った予備実験である。

 

2. 肥沃化の条件

沖縄県海洋深層水開発協同組合の報告書(融合化開発促進事業 平成8年度〜同10年度)で示されているように、深度の違う海水の調合と微量性の重要性が種々の例を出して述べられている。実はこの調合と微量性の考え方が最も重要なのである。つまり、超微量の湧昇だからこそ、深層水が低水温で比重が大きくても表層域に止まり、短時間に拡散することになる。

ここで従来の考え方に固守すると、海域の肥沃化の為には食物連鎖の条件から膨大な量の栄養塩を含む海水(深層水)が必要となってくる。

海ヤカラ1号設置海域の様な熱帯海域では、表層水(有光層)には栄養塩がほとんど無いのにどうしてプランクトンが存在しているのであろうか。プランクトンが表層の栄養塩を消費し尽くしたために現在の表層水にはほとんど栄養塩が無くなったと解釈できるのだろうか。更にプランクトンの発生場所が海域によってかなり限定されているのはなぜだろうか。

以上のことから、植物プランクトンの発生から成魚、ヒトに至る食物連鎖の基礎を成す栄養塩の海域への供給に対して、従来の考え方だけでは説明のつかない事柄が存在する存在することが解ってくる。即ち、栄養塩一辺倒以外の何か重要な見方が欠落しているとしか思えない。

 

 

 

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