乾舷が0.6m以下と低いことは、自噴性能の改善につながる。また、潮流が2.5ノット時の予備浮力が0.534トン(乾舷0.15m)と小さいことは、洋上取水作業に不適当な強潮流(2.5ノット以上)、高波浪の海象にあってはブイ本体は没水しやすくなって係留系及び取水系の外力による負担の軽減につながる。
3.2 深層水取水管システム
3.2.1 一般
「海ヤカラ1号」改造前の使用実績からいくつかの損傷状況が明らかとなった。損傷ヶ所によっては取水管自体の材質、構造に起因すると思われるもの、取水管の連結組立て方によるもの、及び取水管設置作業中に発生したと認められる状態が確認された。
これらの不具合を改善するために次の検討を行う。設置工事に関わる不具合は4.2.2項で検討する。
a) ブイとの連結部の取水管が波浪で煽られて劣化・損傷するのを予防するために取水管連結要領を改善する。
b) ブイとの連結部の取水管の構造、材質について再検討する。
c) 取水管の取水口深度保持に必要な重錘の適正重量を検討する。
d) 取水管組立作業要領の見直しを行う。
3.2.2 取水管システムの構成
「海ヤカラ1号」改造後の取水管システムの構成は、基本的には改造前と大差はない(表2-5参照)が改造前の使用実績に対して次の点について改善している。
a) ブイ連結部取水管の材質・構造及び固定方法を見直す。
b) 取水管の温度差(30℃→2.4℃)による収縮及びガイドロープの荷重による伸びを考慮して取水管の実長を見直す。
c) ガイドロープの経年変化による残存強度低下の実績データに基づいてロープ仕様を見直す。
(1) ブイ連結部取水管の材質・構造
改造前の「海ヤカラ1号」の取水管は、市販の安価な塩化ビニール取水管(長さ50m)を組立てたもので、波浪による繰り返し曲げに対しては劣化損傷予防のために振れ防止及び補強対策を講じていたが、台風遭遇後の調査では取水管周方向に亀裂の発生が確認された。