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はじめに―深層水の研究開発に向けて

 

1. はじめに

本報告書は、平成12年度の日本財団助成事業「洋上設置型海洋深層水取水装置による海洋深層水の調査研究」を取り纏めたものである。

“海ヤカラ1号”の設置は、私どもには予想もしなかった海域の肥沃化の手がかりと言う研究分野に導き、深度600mと1400mより汲み上げた深層水の利活用においては生体組織の活性化維持に繋がる魚介類の鮮度保持現象を垣間みることになった。

自然界には科学をもってしてもまだ解明のできない諸現象が数多く存在しており、本調査研究のテーマである“海ヤカラ1号”に関係する設置周辺海域で植物プランクトンが増加していると考えられる事柄や、深度600mと1400mより汲み上げた2つの異なった深層水を調合希釈生成することで得られる溶液の振る舞いとして魚体の生体組織中心部まで達する鮮度保持効果等も諸現象の一つであると考えている。

また、“海ヤカラ1号”より取水された深度600mと1400mの深層水の“みかけの古さ”がそれぞれ930±70年と2030±30年と測定されたことは、海洋大循環と海ヤカラ1号由来の深層水が関連していることの証であり、先進の高知県、富山県に建設された深層水研究所を始めとする公設施設、及び民間施設を含めて我が国で初めての成果である。

地方において、リスクが多い新規の研究開発を推進し、且つ成果を生み出すことは、良い研究テーマとの巡り会いもさることながら、人的、技術的、そして予算等の物心両面からのサポートが不可欠であると痛感している。

 

2. 組合の設立経緯

沖縄は熱帯の海域に点在する多数の島々よりなり、地勢学的にも重要な位置にあり、多くの可能性を秘めている。

当組合は、平成4年に数名余の民間人が中心となって進められた深層水についての勉強会に始まる。この勉強会発足の直接の発端は、国立医薬品食品衛生研究所化学物質情報部神沼二眞部長より東京大学教授高橋正征先生が書かれた「海にねむる資源が地球を救う-深層水の利用 あすなろ書房」を勧められたことに起因する。

熱帯の海を擁する沖縄での深層水の可能性に夢を抱き、地元産業界の理解と協力に支えられ、自力により沖縄の深層水を汲み上げてみたいと言う単純な動機が始まりである。深層水事業立ち上げの県民意識の高揚を促すことを柱に、平成5年12月に任意団体の沖縄県深層水利用推進協議会が設立され下記の事業を推進した。

 

 

 

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