クロオオアリの身体の形状について
鈴木寛子
私の研究テーマは“クロオオアリの身体の形状について”です。
意外なことに、アリに関する文献や詳しい写真は、容易に見かけることがありません。しかしこの研究では、走査電子顕微鏡(SEM)ならではの、鮮明な写真を楽しむことができます。
SEMを用いることにより、焦点深度が深く、コントラストがはっきりとし、高倍率の像が得られるため、アリの形状を細部まで明瞭に捉えることができました。昆虫共通の器官について、今までの光学顕微鏡よりも形状の明瞭な写真を撮ることができました。
とくに、脚のすべてにブラシのような突起が後ろ側についていることがわかりました。また、今まで明瞭な写真の得られていない体表、肛門の撮影をすることができました。
アリの身体の頭・胸・腹の体表を比べると、体表はうろこのようなでこぼこ模様があり、その形、大きさがそれぞれ異なっていることがわかりました。でこぼこの大きさを比べると、頭部、胸部、腹部の順に大きくなっています。
肛門はただの丸い穴ではなく、穴の周りには、内側からとげのようなものがはえていました。そのため、内側から破られた穴のように見えました。これらはSEMにより初めて確認できたことだと考えています。
今回の撮影で、口器の構造に興味深いものがありました。大顎、小顎、上唇、下唇で構成されている口器の詳細撮影をこれからの課題にしていきたいと考えています。