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体験記

血圧測定ボランティア緊急出動顛末記

青木節子

 

この3月に血圧測定ボランティア養成講座を修了しました。その後何回か先輩達の教え方を見せていただく機会がありましたが、測定の技術を人のために実践したり、話ができるのは当分先のことだと考えていました。自分の血圧は測り慣れても他人の血圧測定をするのはまだまだ自信がありません。それなのに、突然私の出番が回ってきたのです。しかも機内の中での測定とは夢にも思いませんでした。

 

5月に日本医科大学の高柳和江先生について欧州へ行きましたが、その帰りの機内で病人が出たのです。空港を離陸して2時間ほどのところで、高熱と嘔吐のため70歳の男性が倒れ、先生が呼ばれました。

先生はすぐに酸素ボンベと血圧計を乗務員に用意させ、手当てが始まりました。

血圧計は私が持っているのとは少し違っていて、スケール板とゴム球が分かれており、腕帯も大きくてがっちりしているように見えました。私はオロオロするばかりでしたが、なにより病人がいちばん心細いだろうと、その方の体をさすったり励ましたりしていました。症状が治まってきたので先生は薬を飲ませたあと「旅のお疲れでしょう。少し横になっておやすみなさい」と言われ、ご自分も席に戻られました。熱はまだ高く苦しそうでしたので、私はおでこに置いた冷たいタオルを取りかえる役割をかってでました。先生は時折血圧を測り、少しずつ下がり始めたのを見届けてから、「青木さん、日野原先生のところで血圧測定法を習ったのだから今がその力を生かすときよ」と血圧測定を任せてくださったのです。うれしさ半分、不安半分の心持ちで着陸の1時間前まで、1時間おきに測定をさせていただきました。最初先生が測られたとき180あった最高血圧が138まで下がり、脈も落ち着いてきました。熱だけは2〜3分下がっただけでしたが、顔色がよくなりお話ができるようになられました。私は自分のことのように嬉しくて、すっかり興奮してしまいました。

無事に着陸して機内から車椅子で降りていかれましたが、感謝の言葉をご本人や乗務員から伝えられたときは心から安心しました。

先生は「あなたのおかげよ」と、言ってくださいましたが、私は「日野原先生が一般の人に血圧測定を広めてくださったおかげ」とそのとき思いました。こんなときにも役に立つのですね。緊急事態に大変あわてましたが、本当によい経験をさせていただきました。私を信用してくださった高柳先生にも深く感謝しています。

今思い返すと、きっと病人の血圧を測っているときの私の血圧も相当なものだったのではないかとおかしくなります。

 

LPC血圧ボランティアとは…

LPCで開催しているホームヘルパー養成講座、ヘルスボランティア講座を修了し、さらに血圧測定ボランティア養成講座を終えた方が活動しています。

LPCの健康教育サービスセンターで毎週金曜日に開催している血圧自己測定講習会で一般の方に血圧の測り方を指導したり、地方出張や隔月の勉強会など研鑽を積んでいます。

 

新しい冊子ができました。

本年2月に好評をえたセミナーが冊子になりました。

1冊 600円+税

 

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