尿を保持するためには重要な2カ所の筋構造があります。1つは、膀胱の出口の部分(膀胱頸部)であり、もう1つの部位は尿道括約筋の部分です。男性では、膀胱の出口の部分は輪状の平滑筋から構成されていますが、女性では尿道を真ん中に挟んで尿道の前方と後方に2つの筋肉が“U”字型に走っているために、膀胱の出口の閉鎖機構は男性に比べ解剖学的に脆弱なのです。そして、膀胱が緩んでいるときはこの部分が閉じ、収縮すると上方に筋肉が引き上げられるために“じょうご”のような形となって開きます(図5)。
尿がもれそうになったときには、随意筋である尿道括約筋が締まって尿もれを防ぎます。この外尿道括約筋の内側にある尿道平滑筋(図4)はこの部分で厚くなっており、蓄尿を維持する上で役立っています。前立腺の手術では膀胱頸部が前立腺とともに切除されるため、尿道括約筋の部分を損傷すると尿保持のための2つの重要な機構が働かなくなり尿もれを起こします。
心の緊張状態がつづきますと自律神経のバランスが崩れて、心臓がドキドキして、胃から酸っぱいものがこみ上げ、“オシッコ”が近くなります。これは副交換神経が過敏状態となったために膀胱が緊張し、膀胱に尿が少しでも溜まると膀胱の筋肉が収縮を起こすためにトイレに行きたくなるのです。ストレスが本人の自覚のない間に蓄積されて副交換神経と交感神経の均衡が崩れると(心身症)、頻尿が出現し、この病状が悪化すると、尿をもらすことさえ起こします(切迫性尿失禁)。