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彼らの関係は10年、20年かそれ以上の歴史があり、他者の介入で解決するほど問題は甘くないのです。というよりそれでも一緒に暮らしているという実態を重く受け止めるべきでしょう。母親が同居している嫁を「お金を盗む」と攻撃するので、娘さん夫婦が別棟を増築して迎え入れたのですが、1週間すると母親は「私の家はあっちだ」と言って息子宅に戻った事例もあります。

もう一つは、苦痛や悩みを話すのは、必ずしも解決を求めているのではなく、自分の苦悩を理解してほしいということなのです。わかってくれる人がほしいのです。安易な同情や慰めは不要で、解決策を示す必要もないのです。ところが話を聞いた側は、役に立たないと信頼されなくなるのではないかと不安になり、関係調整に走ります。それは、自分の経験や価値観にもとづいた人生相談になりがちですが、それはカウンセリングとは別物であり、また訪問看護やホームヘルプの枠をはずれています。

じっと話に耳を傾けることが大切です。ところが、これは簡単そうでむずかしい。ストーリーを読み取るまでは話の腰を折らずに聞き、相手の気持ちをわかること、そしてわかったと相手に伝えることです。それは必ずしも同じ立場に立つということではなく、相手の気持ちをわかることです。そこまで話を聞くことができるかどうか。これはふだんから人の話を聞くときにそのように心がけるという、積み重ねによって身についてくることです。

 

3) 生活の場に医療やリハビリを持ち込まない

高齢者は高血圧や糖尿病などの慢性疾患をもっているために、食事や運動、服薬など医療的な管理を受けていることが少なくありません。

 

 

 

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