スピリチュアル・ペインを支えるケア
癒しの支えとなるスピリチュアル・ケアというものは、ただ片思いのように思うだけではだめなのです。タッチをしなければなりません。ホスピスのエッセンスは、近代ホスピスの生みの親、シシリー・ソンダース医師のいわれたように"Being with the patient"ということなのです。これは逆にいえば「私の死を患者さんが代わりに死んでくれている」という理解のうちに死の経験をもつことです。
医療職にある人は、普通の人は経験しないことを実に多く経験する機会をもっています。これまで赤の他人であった人が、数日前に入院したときから、からだを裸にしてみなさんに助けを求めることなど、普通の意味での交際ではありえないことではないでしょうか。
旧約聖書にはヨブが140歳まで生きたという記事があります(ヨブ記42章16節)。私が88歳まで生きてきたことについても実にさまざまの長い経験を与えられてきたと思っておりますが、ヨブには私がまたさらに半世紀も長く生きつづけていかなければ経験できないほどのものが与えられていたのだと思うと、その長い豊かな人生に敬虔な思いを抱かされます。
よき看取りびとであるために
寿命というのはいのちの長さではありません。「寿」という文字には、生きても死なないこと、その人が死んでもまだ生きているという意味があるといいます。いのちというものが死んでも残るようにということを考えながら、その人の魂と同行するという思いをもってケアをしていくことがいちばん大切なのです。