このようなしつけを受けて育った大人こそ自己充足的な生き方をするようになります。しかし、人間には本質的に限界があるのです。
人間の限界
人間にはどんなに努力してもひとりでは乗り越えることのできない限界があります。私たちがこの会場に来るときも、いろいろなものに依存して−たとえば、地下鉄に乗ったり、誰かが製造した自動車で来たのではないでしょうか。いや、歩いてきたという方もおられるでしょう。それでも道路を歩いてきたとするならそれをつくった方々がいるのです。また、私たちは生きるためには空気を吸い、食べ物を食べなければなりません。着ている洋服も誰かがつくったのを買ったのです。つまり、人間には本質的に限界があるのですが、自分には限界がある、人間は本質的には制限のある存在なのだということです。
しかし、自己充足的になると不可能なことでも安易にできると思いこんでしまったり、また、できないことまで引き受けてしまったりするようになります。そして、引き受けた責任が果たせないと、自分のできることもしないで誰かに助けを求めてしまいます。そして、援助を受けて問題を解決すると、いままでのことはすっかり忘れ、再び自己充足的な生き方に戻るのです。それは、現実の自分の姿には気づきませんので、どのような体験も真の自立にはつながりません。
しかし、最終的には誰かの助けを受けても解決できない問題にぶつかるのです。