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身体的な癒しだけで十分なのではなく、この人が社会的にも癒され、本来の自分らしさを回復するようにとの配慮の言葉ではないでしょうか。病いが癒えても社会的な関係が回復されない限り、いきいきといのち輝くような健康的生活を取り戻すことは難しいからです。

それには当然、受け入れる社会の側で事情を理解し、ときには既成概念を捨て(あたま)、態度を改め、環境を整備し(からだ)、こころを開いて歓迎する(こころ)という「全人的かかわり」が求められます。

その人を受け入れることで社会が犠牲を払うのではなく(一見そう見えることもあるかもしれませんが)、実はその人のおかげで「より健康な社会」として新しい全体性を備えていくことになるのです。日本の社会では、ごく最近までハンセン病の人たちが社会の不公正、すなわち社会の不健康さゆえにスピリチュアル・ペインを余儀なくされてきました。その痛みを通して社会の「不全」な部分が示され、回復への歩みを進めることができたのです。

エイズやB型肝炎についても社会的受容ということでは心配な面がありますし、病気一般についてそれがいえるのかもしれません。政治家が倒れたときなど、病状をひた隠しにする意図にもそれが反映しています。

何もかにもが「健康志向」で猫もシャクシも「ヘルシー、ヘルシー」、抗菌グッズが大繁盛という最近の世の中のあり方に、何かとても不健康なものを感じてしまうのは私だけでしょうか。

健康な社会というのは、それぞれの人のそれぞれのあり方を受容でき、その全体性を享受できる社会だと思います。そうした中でこそ、ひとつひとつのいのちが輝くことができるのです。

 

 

 

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