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第2章 造形活動における発達段階

 

1、 個人差と共通性

幼児の造形活動の発達は、個人差が大きい。なぜなら、3歳児でも、まだ1、2歳児のスクリブル(2歳あるいは、それ以下の幼児の作る、20種類の基本的な線構成。<図2-3>を描いている子どももいれば、既に4歳児くらいの表現をしている子もいる。また、同時にそれぞれの年齢に、ある共通性を見出す事も出来る。環境や親が違うのにも関わらず、3歳は3歳の一応の共通的特徴が見られる。世界中の3歳児が一度は通過すると考えられる、「頭足人」<図2-1>の絵などはその例である。

 

2、 幼児画の発達における三つの節目

発達の大きな節目は、1歳・3歳・5歳の三点だと考えられている。次にそれを述べてみる。

(1) 1歳児の絵

絵らしい線描きを始める。それが、単なる手腕の運動である事もあるし、描かれた線の動きに興味を持ち、次々と描き続ける事もある。紙の中のしみや色の塊などに線が集中する事もある。例えば、新聞紙のかこみの写真や人物の顔に、線が集中して描かれるなどの例がある。

(2) 3歳児の絵

3歳児の絵の表現は、幼児画の発達の中で、特に大事な節目としての意味を持っている。絵を描き始める1歳児の時も、直立歩行と共に両手が使える事から、「他の動物からの離脱」という意味で大事な節目である。これと同様に3歳児では、シンボル(記号・象徴)を使って、目の前にないものを表す事が出来るという意味で「人間獲得」と呼ばれる時期で、重要である。次に3歳児の絵の特徴をあげてみる。

1] 頭足人を描く

「頭足人」的表現は、大人から教わって覚えた形ではなく、自力て発見したものである。3歳児といっても、2歳児に近い生まれもいれば、4歳児に近い子もおり、すべての子が「頭足人」を同時に描く事にはならない。しかし、<図2-1>の様に、アメリカの幼児も、台湾やシリアの幼児も、同じ様な頭から直接手足が出る「頭足人」的表現をする。

 

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<図2-1> 「各国の幼児による頭足人」

 

 

 

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