3.2 国際会議の開催状況
基調講演、カントリーレポートの要旨は下記のとおりである。討論、意見交換における議事録についてはExecutive Summaryに取りまとめ、資料3.1.3に示す。また各講演資料は付録に示した。
(1) 基調講演
・Dr. McEwan、「Argo計画をはじめとする全球海洋観測システム(GOOS)の発展とその気候予測への貢献」;
GOOSは各国で個別に行われている海洋観測を全球的な観測システムに整備しようというものである。一定の基準を有する国際的な海洋観測体制を整備し、観測したデータをセンターに集め、研究者がこれを利用して最善の効果を得られる事を考慮しつつ、海洋の詳細なデータから、エルニーニョや海面上昇等の様々な現象と、これによる災害の予測をリアルタイムで行おうとするものである。これには様々な観測システムが考慮されているが、新たに加わるArgo計画は海洋データの拡充に不可欠であり、海洋が大気に及ぼす影響を正確に予測するために有効である。
・Dr. M. Kanamitsu、「力学的気候予測に向けて」;
気候の変動は海面水温に大きく影響され、気候の変化を予測するモデルにはこれに与える諸条件、とくに海面水温の入力が大変重要である。しかし海面水温の時間変化を予測することが困難であり、実際にNOAAにおいて海洋と大気との関連を取り扱う種々のモデルをテストしてみると、時間の経過とともに海面水温の予測誤差が生じ、これが気象の予測結果に誤差をもたらしている。しかしArgo計画はこの問題の解決に寄与するもので、気象の予測精度の向上を期待出来る。
(2) カントリーレポート
・SPREP代表;Mr.Lefale
SPREPは南太平洋地域の環境保護と管理を担当しており、26ヶ国が参加して、気候変動・変化を取り扱うプログラムを有し、WMOと密接に協力している。Argo計画は大変有用な計画であるが、8月にサモアで開催されたワークショップでは、フロートが排他的経済水域に入る事があるので加盟国への説得が必要と考えられること、古くなったフロートの処置についての対処方法を良く検討しなければならないこと、参加国へのサポートが必要であること等が明らかになった。
・インドネシア代表;Dr. Ilahude
インドネシアにおける気候と自然災害は主としてモンスーンの影響を受けているが、エルニーニョ現象等による影響も大きく、海洋観測が重要である。そのため、観測を行っているが地点数が少なく、十分なデータが得られていない。Argo計画には興味があり、有用と考えられるが、実施にあたっては関係諸国間で様々な調整が必要である。