(2) 国内機関
1] 全体のまとめ
国内機関に向けたアンケートの集計結果を表2.5.3に示す。この集計結果をまとめると以下の通りとなる。
・現在、過去および将来わたり問題となっている自然災害としては、大雨、海面上昇による浸水、洪水が挙げられている。
・自然災害の増加の原因としては、気候(大気、海洋)の変化が重視され、人間の活動は比較的軽く見られている。
・「気候予測の精度向上や情報、データの重要性」はすべての回答者が認識しているが、調査研究や情報・データの提供は1/3の回答者しか行っていない。
・「気候予測における海洋観測データの必要性」はほぼすべての回答者が認識しているが、調査研究に利用しているのは回答者の3割である。
・実際の海洋観測は回答者の半数弱が実施し、船舶による観測が最も多い。しかしデータは十分ではないと2/3の回答者が思っており、入手についても2/3の人が困難さを感じている。
・国内外の他機関との協力は半数弱の回答者が行っている。
・GOOSを知っているのは半数であった。また海洋観測における国際協力の有益性はほぼ総ての回答者が認識しているが、実際に参加しているのは1/4である。
・Argo計画は約6割の回答者が知らないが、Argo計画で得られるデータには大きな期待が寄せられている。
・協力方法としては趣旨に賛同するにとどまり、フロートと投入に協力するのは約1割であった。
2] 国内の組織別の比較
今回の国内機関向けのアンケート調査結果について、4種の組織の種類(「国家機関・大学・付属研究所」「地方自治体研究所・試験場」「財団法人・社団法人・民間会社」「海運会社」)に分けて集計を行うと、表2.5.4に示すようにいくつかの項目に明瞭な差が見られた。
まず今後増加が懸念される自然災害について、「海運会社」以外の組織はすべて大雨を1位に挙げたのに対し、「海運会社」は海面上昇をトップに挙げており、日頃の関心の強さが現れた結果となった。
海洋観測の実施状況については、「国家機関・大学・付属研究所」とそれ以外の3種の組織で際だった差が見られた。すなわち海洋観測データの調査研究への利用、観測の実施、他機関との協力の実施の設問項目について、国家機関・大学・付属研究所はすべて「はい」が圧倒的であるのに対し、他の機関は「いいえ」が大多数であった。
また、GOOSやArgo計画の認知度についても、同様の対照が見られた。すなわち「GOOSを知っているか?」「Argo計画を知っているか?」の設問に対し、「国家機関・大学・付属研究所」は大多数が「はい」であったのに対し、他の3種の機関は多くが認知していない状況が見られた。
さらにAego計画への協力の意思についても、これらの3種の機関は「未定」や「いいえ」という意見にとどまった。ただこのような傾向はこれらの組織の目的と職掌、規模から来る傾向とも判断される。