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これは1992〜1999年の8年間のTOPEX/Poseidonの高度計データを基に解析したものであり、対象とした台風の個数は115個である。台風中心から離れるに従いサンプル数は増加するので、中心を除く統計値の信頼性は高いものと考えられる。

第3世代の波浪モデル(JWA3G)を用いた台風域内の波高計算結果は、衛星観測結果と定性的に同様な分布を示し、モデルの有効性が確認された。計算結果を細かくみると、台風の中心示度と進行速度の違いにより、波高・周期・波向きの分布特性が異なることが示され、台風域内の波浪の変動特性に関する新しい知見を得ることができた。

最後に、本研究結果は従来の台風域内の海上風と波浪に関する知見を補うものであり、船舶の安全航行や沿岸防災等に役立つ重要な情報であると考えられる。

 

7.2 今後の課題

 

本研究では、ERS衛星データを統計処理して台風域内の海上風速・風向の予備的な解析を行った。今後は力学的な考察により、風向・風速分布の特性を説明することが残されている。

台風域内では、ERS衛星の風速の測定上限である28m/sを超える強風が吹くため、強風に対応する風速アルゴリズムの開発が求められる。

本研究によると、台風中心付近において、衛星風速が過小に評価されていることが推定された。このため、本研究で作成した風速に関する経験式は、海上の現場観測値による検証が必要であり改良の余地がある。

ERS衛星やJER-1衛星等の合成開口レーダから、台風域内の波浪の方向スペクトルを求めて、台風域内の波向き特性を解明することにより、波浪予測モデルの精度向上が図られる。

今後は、台風域内の波高分布等の調査結果を、台風に遭遇する時の船舶の操船や安全航行の情報として、また波浪モデルの検証データとして利活用することが期待される。

 

 

 

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