第6章 台風域内のモデル海上風の比較
本章では、従来より用いられているモデル台風として光田・藤井モデルと傾度風+一般風モデルを取り上げ、第5章で新たに作成したモデルと共に、衛星観測による海上風と比較を行った。
6.1 各モデル台風による海上風分布
先ず、各モデル台風について概略を記す。
(1) 光田・藤井モデル
台風周辺の気圧分布として、Schloemerの式(4.4)式を適用する。次いで、地表面摩擦を考えず、台風は静止状態にあると仮定すると、次式のような傾度風バランスが考えられる。

ここで、Vgrは傾度風速、rtは空気粒子の軌跡の曲率半径で静止している台風では中心からの距離rに一致する。fはコリオリパラメータ、ρは空気密度を表す。台風が速度C(Vgr>C)で移動している場合のrtは、次のBlatonの式

で表され、式(6.1)と(6.2)より、台風移動時の傾度風速が次式で表される。

ここで、θは台風の進行方向から時計回りに測った角度である。この式によって、台風中心に対し左右非対称の傾度風分布が得られる(図6.1右図参照)。
次いで、地表風速VSと傾度風速Vgrの比G(=VS/Vgr)を考える。このGに関しては図6.1の左図のような観測結果があり、(5.12)式で表される。