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1.4 調査研究の成果の概要

 

この調査研究の成果は、第2章から第6章に詳しく述べるが、各章を要約すると次のとおりである。

 

(第2章)

ERS-1、ERS-2の散乱計による海上風データを統計的に解析し、台風時における海上風の空間分布図を作成した。これによると、台風域内の風速分布は軸非対称であり、台風の進行方向に対して右側で風速が強く左側で弱い、という所謂危険半円の事実が衛星データから確認された。また、吹き込み角は一様でなく台風の後方あるいは中心に近いほど大きい傾向がある等の新しい知見が得られた。

 

(第3章)

TOPEX/Poseidon衛星により計測された波高データを統計的に解析し、台風域内の波高分布図を作成した。この結果、波高分布は軸対称でなく、台風の移動速度が遅い場合は、台風進行方向の前方海域において波高が高いこと、速い場合は台風の右側で波高が高いこと等が示された。また、波浪モデルにより台風域内の波浪の場を数値計算し、衛星観測の結果と比較した結果、定性的に両者は近似した。

 

(第4章)

これまでに提案された台風域内の気圧分布を表わす経験式を、地上気圧観測データにより検証した。これによると、各経験式の精度に大きな差異が認められなかった。

 

(第5章)

台風域内の海上風分布特性を表現するモデル海上風を開発した。このモデルは衛星から観測された海上風の分布特性を良く表現する。しかし、風速が非常に強い台風中心付近では、観測範囲の上限や統計海域が広いこと等による誤差のため、衛星観測データは比較的弱い風速であることが示唆された。このため、モデル海上風では基本風速として傾度風を用い、その他の効果として光田・藤井の強調関数を用いた。

 

(第6章)

新しく開発したモデル海上風を、光田・藤井のモデル及び宮崎らのモデル(従来モデルと呼ぶ)と比較した。これら三者は傾度風を基本とするため、風速分布の台風中心からの減衰傾向は大きく異ならないが、詳細な分布特性はそれぞれ特徴が異なる。風向分布については、衛星観測結果に基づいた本研究で作成したモデルが現実に合うモデルと考えられた。

 

(第7章)

本研究結果を総合的にとりまとめた。

 

 

 

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