3.7 現存する海面水温データセットを用いた環大西洋10年スケール変動の実態とその妥当性の検討
北海道大学大学院地球環境科学研究科 谷本陽一
1 はじめに
温室効果ガスによる地表面気温の上昇をはじめとした気候将来予測が数値モデルを用いて盛んに行われている。それらの予測の結果はたとえ全球平均気温といった積分値であっても使用される数値モデルごとによって数度の範囲でばらついている。これらのばらつきはそのまま現存する数値モデルが抱えている予測誤差とみなすことができる。
これらの誤差を改善するために、モデルの出力結果を相互に比較検討することが盛んに進められている。一方で、それぞれのモデルのパフォーマンスは少なくとも現在の気候を再現し、さらには過去の気候変動の時空間構造をも再現できる必要がある。この場合、海面水温場は大気大循環モデルや海洋大循環モデルの境界条件となる。さらに、大気海洋結合モデルでは2つの媒体を媒介する変数となり、より精度の高い観測された海面水温変動場のデータセットを構築することは欠くことができない。
また、地球温暖化が既に起こりつつある可能性は高く、それがいったいどの程度なのかという判断は、現在の気候を精度良くモニターするとともに、過去の気候の状態をより正確に知らなければならない。
観測された資料から大気海洋系における過去の状態や、長期変動の実態を明らかにするためには、できるだけ広い海域において、できるだけ長くかつ精度の高いレコードを用意することが欠かせない。