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3.5 20世紀前半の北太平洋海面熱フラックス場推定の問題点*

 

1. はじめに

歴史的なデータが発掘・ディジタル化されて広く利用可能になるに従い、十年規模、数十年規模、そして百年規模の現象の研究が盛んになってきた(例えばMinobe, 1999;Hanawa et al., 2000)。これらの研究においては、観測技術や方法の変遷に伴う見かけの変動を如何に検知し除去して、実際に生じていた現象を再現するかが最も重要な問題である。

海面水温(例えばHanawa et al., 2000)や海面気圧(例えばTrenberth, 1990)、地表気温(例えばJones and Briffa, 1995)などについては様々な研究がなされ人工的な変動を検知し補正する方法が提唱され、長期間を覆うデータセットが作成されつつある。

ところで、大気海洋相互作用の研究では、個別の海上気象要素の他に大気海洋問のエネルギー交換や運動量の交換も重要な研究対象である。そこで、この研究では1950年より前の時期について、海面熱フラックスの推定に挑戦した。この研究の目的は、歴史的データで過去の海面フラックス場の気候値を復元できるか、また問題がある場合、それが何に起因するかを調べることである。

 

2. データ

ここでは、神戸コレクション(Manabe, 1999)およびCOADS (Woodruff et al., 1984)のデータを用いた。神戸コレクションのデータは日本気象協会が気象庁の指導の下に作成し配布しているMaritime Meteorological Data Sets funded by the Nippon Foundation (KoMMeDS-NF)である。

 

3. 海面熱フラックスの計算

海面熱フラックスとしては潜熱と顕熱を個別に求め、さらに両者の和を取り熱フラックスとした。フラックスは個別の観測値の組から求めた(Sampling method, Hanawa and Toba, 1987)。なお今回は日射と長波放射は求めなかった。

計算は気温、海面水温、露点、風向、風速、気圧の観測値を用い・以下に示すバルク式で行った。

QH=ρcPCH(SST-AIR)U (1)

QL=ρLCL(qS-q)U (2)

 

* 岩坂直人(東京商船大学海洋工学講座)

 

 

 

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