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3.3 北半球海面水温場に見出された気候のジャンプ

安中さやか(東北大学大学院理学研究科)

花輪公雄(東北大学大学院理学研究科)

 

<要旨>

デジタル化されたKobe Collection資料とCOADS(統合海洋気象データセット)資料から、新たに全球海面水温格子化データセットを作成し、気候のジャンプに焦点を当てて解析した。その結果、20世紀の100年間で、7つの顕著な気候のジャンプが検出され、それらは北半球海面水温に対するEOF(経験的直交関数)第1・第2モードの組み合わせほぼ再現されること、さらに、これらのモードと密接に関連しているPNA (Pacific/North American)パターンとAO (Arctic Oscillation)の活動指数の組み合わせでも再現されることが分かった。

 

1. はじめに

ある気候状態から他の気候状態への急激な遷移は、「気候のジャンプ」あるいは「レジームシフト」と呼ばれている。個々の気候状態の持続時間に比べて短い時間で遷移する点が特徴である。1970年代半ばに起こったアリューシャン低気圧の強化と北太平洋中央部における海面水温(SST)の低下は気候ジャンプの一例である。

気候のジャンプは気候系に存在する周期的変動の現れであるとの指摘も多いが、その周期や空間パターンは必ずしも一定しているわけではない。そこで、本研究では、気候のジャンプがいつ起こり、その前後でどのような変化が起こったのかを、冬季SST場に注目して調べることを目的とした。

 

2. 使用したデータ

本研究では、デジタル化されたKobe CollectionとCOADS(統合海洋気象データセット)とから、緯度・経度5度格子の冬季平均SSTデータセットを作成した。また、SST変動に伴う大気変動を見るために、既存の海面気圧場(SLP)、500hPa高度、海上風(SSW)データセットも使用した。また、本研究では、SSTは1-3月、大気は12-2月を冬季と定義した。SSTデータは1854年から存在するが、ある程度格子点が埋まる1901年以降を解析の対象とした。表1に資料の出典、期間などを示す。

 

3. 結果

まず、各格子点におけるSSTに対して、前後5年平均の差を計算し、そのうちその差が90%の有意水準を越えている格子点の、データが存在する全格子点に対する割合を見積もった。その割合が全期間平均を超えた年を図1の最上行に丸印で示す。

次に、1951-1997年の北半球冬季SST場にEOF(経験的直交関数)解析を行った。第1・第2モードの時係数と空間パターンを図2に示す。第1モードはPNA (Pacific/North American)パターンに関連するモードである。実際、PNA活動度指数との相関は-0.55であった、第2モードはAO (Arctic Oscillation)に関連するモードであり、AO指数との相関は0.62であった。第3モード(図省略)は偏西風の南北シフトを表し、4モード(図省略)は偏西風の強弱を表すモードであった。

 

 

 

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