注:未規制時NOx排出量を100%として排出量の低減の状況を示している。
(2) 地域環境問題の解決に向けた動き
(1)で述べたように、自動車による大気汚染が深刻な状況にある中、地域住民の健康を守るためにも、今後も地域環境全体の解決を推進させることが重要です。
こうした中、2000年12月に尼崎公害訴訟が和解し、また、同年11月には名古屋南部公害訴訟第一審判決が下され、国、地方公共団体、民間企業、地域住民が一体となって、より一層の地域環境の改善に向けた取り組みを行うことが喫緊の課題となっています。
コラム:最近の主な大気汚染訴訟
1. 尼崎公害訴訟
本件は、尼崎市内及びその周辺地域に居住又は勤務する住民らが、道路及び事業者からの排出ガスにより健康被害を被ったとして、国、阪神高速道路公団及び企業9社に対し、一定の基準を超える排出ガスの差止及び損害賠償を提訴したものです。(1988年提訴、被告企業9社とは1999年に和解)
2000年1月31日に神戸地裁で判決が下され、判決では、我が国の裁判史上初めてSPMと健康被害の因果関係が認められました。その後、2000年12月8日に大阪高裁で和解が成立し、国は、
(1) 阪神高速道路3号神戸線と5号湾岸線において、料金に格差を設ける環境ロードプライシングの早期実施
(2) 大型車の交通規制を実施するための調査
等を行うこととし、原告は、和解条項に記載された国の施策の内容に鑑み、損害賠償請求を放棄しました。
2. 名古屋南部公害訴訟
本件は、名古屋市及び東海市に居住する住民が、道路及び沿道の工場からの排出ガスにより健康を被ったとして、国及び企業10社に対し、一定の基準を超える排出ガスの差止及び損害賠償を提訴したものです。
2000年11月27日、名古屋地裁で判決が下され、判決では、
(1) SPMによる沿道汚染と国道23号線沿道20m以内に居住する住民の気管支喘息との因果関係を認め国が国道23号線を自動車の走行の用に供することにより、SPMの濃度が1日平均値0.159mg/m3を越えるものとなってはならない。
(2) (1)で述べた住民に対し、国は1,890万円の損害賠償義務を負う。
ことが認められました。