別紙(2)-4
その結果を第1図に示します。この図は各観測航海の航路上に、表面海水と海上大気の二酸化炭素濃度差を棒グラフにして描いています。濃度差が正(赤い棒)の場合は、海水中の濃度が大気中より高い、つまり海水から大気へ二酸化炭素が放出される状況であることを表しており、濃度差か負(青い棒)の場合は、逆に大気から海水へ二酸化炭素が吸収される状況であることを表しています。
これらの図を見て明らかなように、観測時期や海域により、海水中と大気中の二酸化炭素濃度差は大きく変化しており、大気−海洋間の二酸化炭素の吸収・放出の挙動が海域ごとに異なることがわかります。また、大気中の二酸化炭素濃度は場所的な変化が小さいことから、ここに示された濃度差の変化は、主に海水中の二酸化炭素濃度が大きく変化しているために起こっていると言えます。
今後は、この観測を継続的に行うことにより、海域毎の季節変化などを明らかにし、当該海域での大気と海洋間の二酸化炭素交換量の正確な見積りを求めていきます。なお、ここで観測されたデータは、気象庁が担当しているWMOの「温室効果ガス世界資料センター」を通じて公開することになっており、多くの調査や研究に貢献するものと期待しています。
3. おわりに
一般商船の協力により、観測船では実施できないような、太平洋を横断するスケールでの繰り返し観測が可能となりました。このようなデータを積み重ねることで、地球温暖化に対する海洋の役割が明らかにされていくものと思われます。もちろん、今回示した航路での観測だけで太平洋全体の様子が理解できるわけではありません。今後は、観測海域の拡充を目指すとともに、同様な観測を行っている国内外の機関と協力し、データの流通を促進することで全海洋の実態を明らかにしていくことが必要です。
最後になりますが、このように貴重な観測事業を実施している交通エコロジー・モビリティ財団、およびご支援いただいている日本財団に敬意を表します。また、本事業にご理解、ご協力をいただいているコンテナ船「ありげーたーりばてい」乗組員の皆様、株式会社商船三井、エム・オー・シップマネージメント株式会社、ならびに社団法人日本海難防止協会関係各位に深く感謝いたします。