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別紙(2)-3

1999年11月

 

2. 定期コンテナ船による二酸化炭素観測

ここで紹介する観測は、交通エコロジー・モビリティ財団が日本財団の補助金をうけて平成10年度より行っている、「一般商船による北太平洋の温室効果ガスの観測システムの構築」によるものです。

この事業は、一般の船舶に搭載可能な観測装置を開発するとともに、その装置を実際に商船に設置し年間を通して長期間に渡る観測を行い、地球温暖化現象の解明に資する資料を提供することを目的としています。

観測に協力いただく商船を選定するにあたっては、北太平洋を横断する航路で定期的に運航され、観測装置の設置スペースを確保でき、さらに観測技術者1名の便乗が可能であることなどの条件のもとで(社)日本海難防止協会を通じて行いました。その結果、大阪商船三井船舶株式会社(現・株式会社商船三井)のご理解を得て、エム・オー・シップマネージメント株式会社が管理するコンテナ船「ありげーたーりばてい」(写真1)のご協力をいただくことになりました。

本船は、香港〜日本〜北米東岸(パナマ運河経由)を定期的に往復しています。観測はこの航路の中で日本からパナマ運河に向かう航程で行い、表面海水中と海上大気中の二酸化炭素濃度、表面海水の水温および塩分を連続的に測定することにしました。なお、気圧、気温、風などの海上気象データは、本船で観測・通報している結果を利用することにしました。

海水中の二酸化炭素を連続的に測定するためには、試料となる海水を常時汲み上げて観測装置に送り込む必要があり、観測船では専用の海水ポンプが備えられています。コンテナ船をはじめとした一般船舶に観測用の海水ポンプを設置することは、大掛かりな工事が必要となるため、ここでは機関(空調機)の冷却海水を試料海水として利用することにしました。このため、観測装置は空調機室に設置することとなり、そこでのスペースに合わせて観測装置は製作されました。

二酸化炭素観測装置は、これまでの実績から気象庁の観測船で使用している装置を原型として設計されました。ただし、航海中は観測技術者1名で保守管理を行うため、可能な限りの自動化をはかるとともに、本船の運航へ悪い影響を及ぼさないよう安全面への配慮を強化したシステムとしています。また、観測装置の設置作業は、短い寄港時間内に行わなければならないため、装置をなるべくユニット化することにより、作業時間を短縮するようにしました。本船空調機室に設置された、観測装置を写真2に示します。

海水や大気の二酸化炭素濃度を測定するためには、二酸化炭素濃度がわかっているガス(標準ガス)を物差しとして使用します。写真には見えませんが、この部屋には標準ガスのボンベも積み込まれています。使用している標準ガスはWMO(世界気象機関:国際連合の専門機関の一つ)のスケールで二酸化炭素濃度が正確に測られているため、本船の観測結果と他の船舶たとえば気象庁の観測船で測定した結果と比較することを容易にしています。

このシステムによる観測を平成11年1月の航海から開始しました。季節変化を捉えるために、年間4回の観測を計画し、これまでに3回の航海で観測が行われました。

 

 

 

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