2] 不動産開発とカーシェアリングの普及
日本のように土地価格が高い場合は、カーシェアリングにより住戸数に対応する必要駐車場の数が減少する。15世帯に一台であれば14台分約300m2分の土地が節約でき用地費、開発費の減少は絶大である。また、居住者にとっても、個人的に車を持たなくても必要なときに利用できるシステムは経済的であるとともに、車の利便性をあきらめる必要がなく、カーシェアリングのサービスが存在することでマンション等の魅力や付加価値が高まるものと期待される。
日本において、集合住宅等の開発とカーシェアリングの導入との関係を以下に考えていく。
ア. 集合住宅におけるカーシェアリングへの考察
○背景/視点等
1. 日本の分譲マンションの総ストック数は370万戸以上のボリューム。
2. カーシェアリングの導入に関連すると思われる分譲マンションの特性を上げる
i. マンション立地は都心部傾向(交通利便性・地価・駐車場賃料による維持コスト差、などによる導入障壁の低さ)
ii. サラリーマン家庭の代表的住まい(居住者の経済的・教育レベル・生活形態などの特性)
iii. 管理組合の存在(カーシェアリング運営主体の候補)
iv. 区分所有の駐車場等(共用部分)の存在(最も確保が難しいかもしれない「スペース」の確保)
“草の根”的な浸透というコンセプトから考えると、マンションの「管理組合」という存在にスポットライトをあてる意味は大きいと思われる。(地域社会性と主体性を有する住民組織)
3. 多くの管理組合では、「駐車場の不足」「資産価値の維持」などの様々な課題を抱えている。また同時に管理組合を構成する区分所有者は「管理費や住宅ローンの経済的負担」など、全員に共通する課題もある。このような背景を考えると、日本製カーシェアリングの苗床としての期待できるだろう。
○集合住宅の導入についての仮説
1. デベロッパーが、実証もなく直ちにマンションの販売コンセプトとして、カーシェアリンングを導入することは考えにくい。またデベロッパーがカーシェアリンングの運営主体として、販売後も引き続きサービスを提供するのは、事業体質上難しいと思われる。
→分譲事業は、売れないリスクと隣り合わせ。販売上は、カーシェアリンングという仕組があることよりも、駐車場が少ない、マイカーを所有できないという「ない」を商品上のデメリットと考えるのは当然。
2. 既存マンションの管理組合の活性度の差はマンションによって大きい。しかし、マンションとしての課題も多く、またボランティアで活躍できる人材の多い、築10年以上の大型物件においては、さまざまな工夫や改良が組合自らの手によってなされているケースが散見される。