3) カーシェアリング事業の展開…事業モデルの提案
カーシェアリングが日本の車利用者に受け入れられ一般化すると仮定したとしても、カーシェアリングの事業そのものが成立するかどうかという問題がある。たとえ成立する場合にも、カーシェアリングの利用者数が十分な規模に達するまで時間がかかると予想される。
十分な市場に育つまで、事業者は継続して運営を続けていなくてはならないので、最も厳しい初期段階で事業を成り立たせるためには、収入が見込めない期間の支出を極力圧縮できることがカーシェアリング普及の絶対条件である。
ヨーロッパでは概ね50台程度の所有規模とか、800人程度の会員が安定したカーシェアリング運営の最低適正規模といわれている。今回の試算でも経費をぎりぎり落としたとき概ね400人程度の会員で何とか成立する結果になっている。
しかし、カーシェアリングの初期段階で、いきなりこの規模を期待することは無理で、このレベルに到達するまでの期間は、一定の支援策等が不可欠である。特に意欲がある事業者の誘導には効果的である。
カーシェアリング事業を成立させるには、以下の工夫あるいは支援が必須である。
1] 経費軽減ができる運営方法
2] 効果的な支援方策
1] カーシェアリングのビジネスモデル…経費軽減ができる運営方法
日本でカーシェアリングが成立しうる事業形態を考えると以下の事業形態をもつ組織が想定できる。
A. 小規模経営…人件費、事務所賃貸等の運営費を抑えた経営のタイプ
経費として大きな比重を占める運営費が最もかからない零細な個人運営、あるいは、固定費が節減できる組織で採算性の条件を整える。
ぎりぎりの運営であるので、あらゆる助成・支援策が大きな効果を発揮する。
a. 個人小企業 カーシェアリングの意義を理解し、多少NPO的な性格を有する運営費を切りつめた運営努力をする。
特に車の入手等の資金調達、会員募集時の初期支援が必要。
b. 組合等形式 利益を生み出す企業活動ではなく、共同で組合員がカーシェアリングを運営するような形式は、発生当初の形式に近い。
小規模運営と基本的な部分は同じだが、赤字の時は料金設定を変更しやすい反面、共同責任を原則とする。経営モデル、コンサルティングが重要な支援策となる。
c. NPO団体 非営利事業として、社会的支援と自助努力で運営を成立させる。
団体の目的と事業形態が明確で参加しやすい、一方、ネットワーク化や関係者の協力を得られやすい。