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はじめに

 

本報告書は、日本財団の平成12年度助成事業として実施した「自動車共同利用システムに関する調査研究」における、研究会での検討結果をとりまとめたものである。

 

環境問題への関心が高まりつつある中、大量生産・大量消費型社会から循環・省資源型社会への移行の必要性が唱えられている。当財団では、交通の分野でこうした新しい時代にふさわしい交通システムの方向性等を研究すべく、平成11年度に「エコ交通に関する調査研究」を実施した。その中で、車の新しい使い方として欧州各地で増加しつつあるカーシェアリングについて重点的に調査を行った。

カーシェアリングは複数の個人による自動車の共同所有と利用が発展したもので、当初は小規模な仲間同士などで自然発生的に行われていたものが、十数年前からドイツ、スイス等で組織的に運営されるようになったものである。このうちスイスでは、会員は3万人を超え、車両数も1400台を超えている。

カーシェアリングの利点は、個人にとってはマイカーに近いモビリティがより安く確保できることである。社会的にも、車の絶対量や交通量を削減し、交通渋滞緩和や環境改善への効果が期待されるほか、車に占拠される都市空間の節約をもたらすと考えられる。カーシェアリングは、人々の車の使い方を社会的に望ましい方向に導く新しいライフスタイルの提案であり、20世紀から持ち越された車社会の弊害を解決するための方策の一つとして注目される。

当財団では今年度、カーシェアリングに代表される自動車共同利用システムの我が国での普及をめざして、本研究会では、諸課題の検討、普及のための支援策、あるいは運営方法等について具体的検討を行った。平行して進められた分科会においては、13年度にモデル実験を行うための実施計画の策定に向けた検討を行った。

 

これらの調査にあたっては、学識経験者、産業界、公団、銀行、関係省庁等の方々からなる委員会、研究会、分科会を設け、指導・助言をいただくとともに、実際の作業にもご協力いただいた。太田委員長はじめ、委員の皆様方ならびに調査にご協力いただいた多くの方々に深く感謝を申し上げる次第である。

本報告書が広く活用され、環境にやさしい交通の実現に向けて貢献できることを願っている。

 

平成13年3月

 

交通エコロジー・モビリティ財団

会長 大庭浩

 

 

 

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