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図4 待合室で待機する人(左)を、迎えにきたPTSのドライバー(右)

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患者への一定水準のケアを維持するには、PTS職員のトレーニングが重要である。非緊急部門のの職員は、緊急サービスに従事する職員に比べれば簡易なトレーニングで済む。PTSのスタッフになるとまず、2週間のトレーニングをLASのトレーニングスクールで受講し、応急処置、容態悪化等緊急時の対応、抱え上げ、患者のケア、運転技術に関する講義、実技訓練を受ける。トレーニングを終えると、経験を積んだ職員に同乗し、実際の患者を搬送する実地訓練を行い、その後通常勤務に入る。

 

(6) NHSトラストとアンビュランス・サービス

NHS (National Health Service:国民保健サービス)は保健省の医療財源による保健医療制度で1948年からの歴史ある制度である。国民はほとんどがこの健康保険の加入者である(最近は民間保険の加入者も増えている)。1990年のNHSおよびコミュニティケア法で、NHSの委員会が医療改革を進める政策を打ち出し、英国の医療に大きな変化を生じさせてきている。

NHSは8つの地方保健局(Regional Offices)と自治体レベルの100の地区保健局(HA: Health Authorities)を管轄する(図3)。

 

図3 病院トラストの仕組み

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トラストとは独立法人のことである。NHSの管轄にある組織を効率的に「経営」するために、病院を経営するトラストやアンビュランス・サービスを経営するトラストが設置された(実際には新設したわけではなく、これまでの組織をトラスト化したのである)。すなわち、NHSトラストである。病院やアンビュランスの名称の後にはNHS Trustと付されるのが一般的である。

英国におけるトラストは「行政にもビジネスセンスを」というサッチャー政権時代の構造改革による。これまで公的財源のみで運営されてきた組織を、競争原理を導入し、効率を追求するものである。英国の行政改革の一端を示すものと言える。これまで行政が丸抱えであった部分をトラストという形態にして、経営と営業の努力をさせるものである。

これまで国民保健サービスでは、医療を提供し購入するのも保健局であった。この改革では、医療を受ける場合、地区保健局が病院トラストから医療サービスを購入する関係になった。

 

 

 

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