資料-2 ロンドン・アンビュランス・サービスNHSトラスト
London Ambulance Service (LAS) NHS Trust
<医療系の送迎サービスについて>
本資料はイギリスの患者送迎サービスについて述べたものである。
わが国でもスペシャル・トランスポートの需要は高まっており、将来的には交通システムの一部として位置づけられる可能性もある。現在、一部の非営利組織、ボランティア組織、社会福祉協議会等により、「ハンディキャブ」等の呼称で個別の送迎サービスが実施されている。利用目的に制限を設けず運行している組織が多くある一方で、実態としてはサービスの多くが通院に利用されている状況もある。そのため、レジャーや買物など他の目的の利用が制限されることもある。
本来、通院の送迎はどのセクターが責任を持つかという議論が改めて必要とされている。
イギリスでは、通院の送迎は、ここで述べるアンビュランスサービスおよびボランティアの自車利用によるソーシャル・カー(またはコミュニティ・カー)が担ってきた経緯がある。また、最近では、政府がこの10年来進めてきた重点的な施策として、病院での入院期間を短縮し医療費の削減をはかると同時に、地域コミュニティのなかで患者をケアしていくという方向性も影響し、病院送迎の重要性が高まっていると考えられる。結果として、患者は早期に退院を迫られ、外来として治療を受けることになり、通院のためのアンビュランスサービスが頻繁に必要とされている。患者送迎を交通の問題という観点だけで捉えたのでは解決策は見出せず、多角的な検討が必要な分野である。
医療のための交通手段をどう確保していくのか、イギリスの患者輸送の仕組みを知ることにより、それを考えるのは有用である。通常の公共交通の枠内での整理が難しいことから、本報告書では、医療系の交通として、ロンドンのアンビュランスサービスの事例を資料として扱うものである。
(1) アンビュランス・サービスの概要
ロンドン・アンビュランス・サービス(LAS)はロンドン都市圏で救急車のサービスを提供する組織である。全国には地域ごとにアンビュランス組織があり、イングランド全体では37の組織がある。