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c. 新たなマーケットの創出

このような新たなコンセプトに基づくシステムは、タクシー業界にとっては新たなマーケットになる可能性が高いため、業界の期待が高まっている。ストックホルムの例では、デモンストレーション期間をできるだけ短くして、早く本格実施したいという意見がタクシー事業者から出されている。こうしたサービスに参入することにより、タクシー事業者は、流しの営業を行うのに比べて確実に収益を上げる道が開けるためである。新たな需要、サービスを導入する事により、活路を見出していこうとする事例といえる。

 

d. テスト運行

ストックホルム県のテストでは、STS有資格者を中心にモニターになってもらい需要の事前調査を実施している。約150名がテストに参加している。ヘルシンキですでに実用化されているシステムがあり、そうした事例も参考にされている。

サービスが軌道に乗った場合、事業として実施するために、県のSTS委員会でサービスが改めて制度的に位置づけられることになるが、タクシー業界でどれくらいの事業者がこの事業に参加するかは把握されていない。事業者にとっては、安定収入のメリットだけでなく、予約、料金、配車のシステムに影響がでるので安易に便乗できないという見方もあるためである。

タクシー業界の一部では、付加的なサービスとして、ドアからベッドへの介助サービスなど、サービスを分節化してサービス料を徴収できないか検討している。法制度や車両は全く異なるが、日本のケアタクシーと似たサービスを実施する可能性がある。

実際の運行に際して、運賃の徴収は、プロジェクト専用のカードを作って運賃の決済を行うことを想定している。人事的な管理システム(ディスパッチセンターなど)をなくして、コストを下げる工夫も検討されている。

テスト運行に参加するユーザーは仕事をもっているアクティブな障害者が多いため、サービスの利用回数も多い層と考えられている。特殊サービスであるため、普通のタクシーでは利用できない人というのが、前提条件である。STSの場合と、資格取得要件や運賃は同じにしている。

 

e. 車両

現段階では、ノンステップ車両の導入にあたり、タクシー事業者に対する車両改造のための補助はない。今後、経済的にどのようになるかは未知である。このままでは事業者には大きな負担である。既存車両を改造する場合そのコストはおよそ50%増しになる。今後量産によりコストが安くなるかどうかがこのサービスの展開可能性に大きく影響する。

ストックホルムのテストケースでは価格的な問題もあり、車両はフォルクスワーゲンのカラベルを使用する予定である。

 

 

 

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