(単元の最後に車両平面図あり:図5-4-4-15、5-4-4-16)
d. システム確立までの取り組み
i) STSのコスト低減の模索
STSについて、1992年から相乗りタクシーや特別装備がついたバン車両による高度DRT (Demand Responsive Transport)システム、PLANET (STSの予約、運行計画システム)開発に対して市が資金投入してきた実績がある。PLANETは主として公共交通を利用できない高齢者・障害者に対して、1日あたり約5,000件のデマンド型トリップの予約・計画・配車をコントロールするシステムである。こうしたシステムの運行には自治体からの十分な財源補助が必要である。現在、年間約16億5,000万円(資料では1,500万ユーロ;1ユーロ110円換算)が支出されている。
フレックス・ルートを開発する大きな要因としてコストの問題が挙げられる。これまでの利用のわずか15分前の予約に対応してSTSを提供するシステムを維持・運営することは、コスト的にみて非常に高い。財政状況が厳しくなる中、予約システム、運行方法見直しを迫られていたのである。市内の人口のおよそ5%がSTS有資格者であるが、それ以外にも多くの移動制約のある高齢者が存在していると考えられている。これは、バス路線のネットワークから見て、バス停まで長い距離を歩かなければならない高齢者等が存在していることや、体力的に弱った人にとって移動しにくい市内の丘陵地形とも関係している。こうしたSTS有資格者以外の人を取り込むことで、資格のある人、ない人双方にさらに効率性、利便性を高めるものである。
ii) 新しい交通システム開発において目標としたもの
新しい魅力的で効率的な地域の交通システムを開発し実験することの目標として、表5-4-4-1に示した点に資するシステムでなければならないとされた。
これらの目標を可能にするために、解決策として「中間的な形態」(タクシーと時刻表のある公共交通の中間)=フレキシブルな交通の必要性が検討された。その特徴は表5-4-4-2のように整理される。これらの目標がフレックス・ルートのアイディアの原点である。