(3) デンマーク国鉄(DSB: Danske Statsbaner)
1] DSBの事業概要
a. 組織の概要
DSBはデンマーク最大の鉄道事業者である。1999年の旅客輸送実績は、1億4,900万人で、デンマーク国内の全旅客輸送のおよそ6.4%にあたる。DSBは旅客部門と貨物部門からなり、貨物部門は完全な自由競争のもとで経営されている。首都圏では、主要な通勤・通学の足であるSトレインを運行している。また、スウェーデンとの国際列車もデンマーク国鉄の業務である。
旅客部門は運輸省の監督のもと、同省との契約に基づいた計画に沿って運営されている。1999年1月1日より、DSBは独立した公共企業体として再編され、同時にDSB鉄道株式会社(DSB Trains A/S)が設立された。DSB鉄道株式会社はDSBによって所有され、DSBは政府によって所有される構造になっている。
DSBは90年代に入り頻繁な組織変化を行っており、現在の組織は図4-4-3-1のようになっている。
DSBは政府(運輸省)と緊密な関係にあることに変りないが、今後は独立法人として、法律的にも形式的にも行政との役割分担を明確に区分して対応していく。DSBの運営委員会および理事会は有限責任会社として法律に基づいた運営を行い、政府に対するインフラ使用費の支払い、サービス提供の義務など、政府との事業契約に基づいて業務を遂行する。
インフラの管理は、政府管轄の事業体であるデンマーク国有鉄道公団(the Danish National Railway Agency)が行う。同公団は政府の行う鉄道事業について、鉄道路線、信号設備等のインフラの所有、管理を行っている。このインフラをDSB及び民間の鉄道事業者に貸与し、鉄道ネットワークを整備している。
DSBの運営は基本的に公共交通の提供に関する運輸省との合意・契約に基づいて行われている。契約では、サービスレベルや一般的な契約条件、委託金額などが取り決められている。また、は今後5ヶ年の実施計画に関する政治面での交通政策(鉄道事業者における投資計画の枠組み等)の合意があり、DSBはそれに対応することになる。DSBにとって重要なのは、新たな設備を導入できるかどうかの可能性と、古くなった設備の更新を促進できるかという点である。この計画では、高齢者・障害者が利用しやすい公共交通にすることにも力を入れており、車両を始めとする新規購入物品にもバリアフリーを配慮する事になっている。また、旅客サービス向上のために5つのストラテジーを掲げて取り組むことになっている(表4-4-3-1)。