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多くのアクセシビリティ対策が実施されてきているものの、今後もバリアフリー整備は必要とされており、将来的には世界のアクセシブルな公共交通のモデルになることを目標に取り組みを強化するべきである」としている。そのために、肢体不自由者、視覚障害者、聴覚障害者、学習障害者などすべての人のモビリティを高めるための5つの戦略を提示している(表3-4-2-4)。

 

b. 課題と計画

TfLアクセス&モビリティでは従前の障害者対策室(Unit for Disabled Passengers)時代の1991年からデザイナーや技術者を交えて交通のアクセシビリティに関する課題に取り組んできた。その一つの結果がローフロアバスの導入である。現在およそ2,500台が導入されており、普及に伴い価格も従来より10%ほど下がっている。しかしながら、委託バス事業者に対して、耐用年限の半分に満たない旧来のアクセシブルでない車両を廃棄し、ローフロア車に更新させていくことが課題となっている。

バスの車両に関してはそのタイプ数が多いことが障害者からの不評を買っている。ある視覚障害者がアクセス&モビリティの担当者に話したところによれば、その視覚障害者がよく利用する地域のバス車両には17のタイプがあると言う。手すりや降車ボタン、扉の位置などが異なり使いにくいという指摘である。TfLでは車両の新規購入において、詳細な仕様を定めて車両タイプの統一に取り組んでいる。

また、バス路線上では路上駐車車両が問題になっている。せっかくのローフロアバスが歩道まで近づく事ができない。歩道段差の高さについても、ローフロアバスのスロープを引き出した時にフラットに近い角度になるように、12.5cmにしていきたいという意向がある。実測したところでは、市内には4.2cmから22.1cmまで様々な高さの歩道段差があることが把握されている。今後はロンドン大学および車両メーカー、舗装材業者と共同で研究を進めていく予定である。

地下鉄については、例えばジュビリー線の延伸に伴うバリアフリー化も政府の主導により進められた。またDDAにおいて、新規路線および既存施設については、大規模な改修を行う場合にアクセシブルしなければならないことになっているため、今後はバリアフリー化がすすむと考えられる。ただし、こうした改善はフィージビリティスタディにより、財政的、技術的に非常に困難だと判断された場合のみ行わなくてもよいことになっている。しかし、地下鉄でそれに該当するような環境の施設はほとんどないという認識である。したがって、特に25m以上の深さの駅について重点的にバリアフリー化に取り組む予定である。莫大な費用を要する事業のため、前述したように当面68の主要駅を選定し、10から15年で完全にアクセシブルにする予定である。また、ホーム上には列車との高さを合わせる「プラットホームハンプ」を設けて、車いすで車両に容易に乗車できる工事を計画している。

 

<参考文献>

(E023〜E026、E028、E029)

秋山、三星ほか。『講座 高齢社会の技術6 移動と交通』。日本評論社。1996。

松尾、小池、中村、青木。『交通と福祉−欧米諸国の経験から−』。文真堂。1996。

 

 

 

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