図3.29で4種類の歩行条件を比較してみると、誘導あり条件(黒塗り記号)の方が誘導なし条件(白抜き記号)よりも停止距離が長くなっている。このことから、誘導ブロックと警告ブロックの切替わりを瞬時に検知することは、容易ではないと推測される。被験者が停止した後に聞き取った内省報告によれば、誘導あり条件では、ブロックがなくなったことを停止判断の材料としている試行は、杖あり条件と杖なし条件のそれぞれで約30%であった。それ以外の条件では、最大でも約4%であった。誘導ブロックから警告ブロックへの切替わりには瞬時に気づきにくく、ブロックの切替わりではなくブロックがなくなったことで縁端部に来たことに気づく場合があり、この気づき方の違いが、停止距離の差に影響を及ぼしている可能性があると考えられる。
4条件の中では、杖あり誘導なし条件が最も停止距離が短い。これは、誘導なし条件では何もない状況から凸部を検出すればよいこと、杖あり条件では白杖によってブロックより手前でホーム縁端に達したことに気づく可能性が高いことの相互作用によるものであると考えられる。