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アノードに正、カソードに負の電圧をかけると、一段目のホールと二段目の電子はその境界J1において、それぞれ下方と上方に移動し、また三段目と四段目の境界J2においても同様で、互いに境界を通って移動しあうが、二段目と三段目の境界J2に空乏層となり、全体的には電流は流れない。この状態で電圧を順次高くしていくと、ツエナー現象を生じて突然電流が流れるようになるが、このツエナー現象をゲートに正の電圧を掛けることによって、アノードの電圧が比較的低いときでも起こさせて、電流を流そうというのがサイリスタである。すなわち、ゲートに正の電圧を掛けることによってゲートとカソードの間に電流が流れ、ゲートから入ったホールや、四段目から三段目に入った電子が空乏層に迷い込み、二段目と三段目の間に電流が流れることになって、ツエナー効果の発生を促進する。一度ツエナー効果が生ずると、SCRの内部抵抗は小さくなって、大きな電流が流れ続けるのでサイラトロンと同じような効果を持つことになる。

 

3・6 送受切替管

レーダーでは普通、送信用と受信用に同じ空中線を使用し、例えば3cm波のレーダーでは、空中線への導波管に送信機と受信機がT分岐を通じて同時に接続されている。この場合、送信機の大きなパルス電力が直接受信機に入ると、受信機のダイオードが破損したり、その他の受信回路にも悪影響を与えたりするので、送信中は受信機を導波管回路から切り離す必要がある。また、逆に受信中には、弱い受信信号を、送信機側と受信機側とに分けると、更に弱くなってしまうので、受信中は送信機を切り離しておくことが望ましい。これを自動的に行うのがTR管とATR管であり、ともに導波管の一部に挿入して使用する一種の放電管である。これらの放電管は送信の出力により放電を開始し、送信が終わると直ちに放電が停止するように作られている。

TR管はガス入放電管のため、使用しているうちに封入ガスの消耗などによってだんだん劣化してくるので、現在、送受切替装置として、サーキュレータ型デュープレクサやダイオードリミッタが多く使用されるようになった。

サーキュレータの構造は図3・11に示すように静磁界によって一様に磁化されたフェライト棒を導波管に挿入したもので、この中をマイクロ波が伝搬するとき、一方向に進行するマイクロ波に対してはほとんど減衰せず、逆方向に対しては大きな減衰を与える非可逆特性をもっている。これは、マイクロ波の周波数とフェライトを磁化する静磁界とがある関係にあるとき、マイクロ波のエネルギーが著しくフェライトに吸収されることを利用したもので、共鳴吸収ともいわれ、マイクロ波が正円偏波のときだけ生じ、負円偏波のときは起こらない。また、フェライト自身がマイクロ波エネルギーを吸収するので、大電力でも使用できるという特長がある。

 

 

 

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