在来方式との主な相違点は以下の通りであるが、電気推進方式は在来方式にない、多くの優れた特徴を有している。
(a) 利点
(i) 主機と発電機を共用する場合が多く、原動機の型式、重量の均一化、設備台数および、シリンダ数減を図ることができる。
(ii) 操縦が容易で、また、遠隔操作が容易である。
(iii) 発電機の原動機の位置が推進用電動機の位置を拘束しないから、電動機を任意の位置に選べる。したがって、中間軸を排し、電動機を船尾に設けられるから、それだけ貨物倉を増すことができる。
(iv) 発電機の原動機を必要に応じ、分割して設置すれば負荷に応じ、台数の増減によって運転できるから、経済運航が可能である。
(v) 速度制御が一般に容易で、逆転が速かで最大出力まで利用できる。
(vi) 低速域で大きなトルクが得られて、砕氷船等の推進システムとして有利である。
(vii) 原動機が定速であり、運転台数(シリンダ数)も負荷に応じて自由に減らし得るのでメンテナンス性に優れる。また、電気設備としても交流化、デジタル化により、機器自体の保守整備の簡易化を実現している。
(viii) 発電機用であるため原動機の弾性支持が行い易く、またトルク脈動の少ない電動機で推進するので振動・騒音が少ない。
(ix) 原動機が定速であり、環境対策としてNox対策がし易い。
(b) 欠点
(i) 設備費が割高である。
(ii) 燃料消費量がやや大きい。
(iii) 静止型変換装置を使用する場合、高調波に対するノイズ対策が必要となる。
(iv) 逆電力に対する検討が必要となる。(場合によっては、逆電力吸収装置の装備が必要)
3・5 復習問題(4)
(1) 主機関の出力の種類のうち常用出力、連続最大出力及び過負荷出力について述べよ。
(2) 主機関の伝達出力とはどのようなものかを述べ、かつ、タービンの伝達出力2000kWのとき軸出力はいくらになるか。
(3) 船の速力を30%あげるためには、伝達出力を何%上げればよいか。
(4) 主機関の出力5000PSは何kWになるか。
(5) 1000馬力のディーゼル機関において、1時間の燃料消費量が200kgとすれば、この機関の熱効率はいくらになるか。
ただし使用燃料の発熱量は10000kcal/kgとする。