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この意見交換の中で、バルチラ側の自社技術に対する大きな自信が感じられた。

その後、工場内の研究用運転場の見学を行った。そこには主要モデルが実験研究のためにセットされており、歴史のある工場の風貌の中にもこういった最新システムを用いて実験研究を行っている姿を目にして、彼らの歴史の上に培われた確かな技術を感じて午前中の予定を終えた。

午後一番の予定は、機関製造工場の見学であった。この時期の欧州は夏期休暇シーズンであったため、工場内での生産ラインは停止気味で寂しい雰囲気はあったが、各モデルの機関が整然とライン上に並び、組立から試験、出荷までの一貫したラインを隈なく見学する事が出来た。

工場見学を終えて再びカンファレンスルームに戻り、原田氏によるADD機関のプレゼンテーションが披露された(写真12)。さすがに専門分野のバルチラ側からは厳しい質問があったが、バルチラにとっても新しい情報であり、興昧深いプレゼンテーションであったことは間違いない。

最後に、Vaasa市内のPilot Power Plantを見学した。ここは、1998年に設立されたパワープラントであり、バルチラ製46型と64型機関(C重油焚き)+ABB発電機、2基の排ガスボイラー、スチームタービン、脱硫脱硝装置により構成された複合サイクルの発電所である。プラントマネージャーのOrn氏の案内のもと、施設内を見学した。陸上用プラントではあったものの、船内さながらシステムを体感する事が出来た。

Pilot Power Plantを後にし、フライトまでの間にHalkivaha氏は我々と歓談の時間を設けてくれた。その中で、今後もYME使節団がバルチラ社を訪問する事を希望するとの言葉を頂戴して、全てのスケジュールを終えた。

このバルチラ社訪問は、彼らの自信と、最新技術に対する飽くなき挑戦をする積極的な姿勢を実感した訪問であった。更には、多彩な訪問内容ではあったが、その内容は充実しており、多忙なスケジュールを感じさせない最終訪問地にふさわしい内容であった。

ヘルシンキ空港に到着し、ホテルに戻ったのは午後8時を回っていた。全ての訪問スケジュールを終えて、使節団全員の顔には安堵と満足の表情が表れていた。

 

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写真12 技術プレゼンの様子

 

7. おわりに

 

まず、このような機会を与えて下さった日本財団、日本舶用機関学会、学会発展的改革委員会および国際交流委員会の関係各位にお礼を申し上げます。

今回の渡欧では、IMarEの若手会員や舶用機器メーカーの技術者との交流により国際的人脈を広げ、海外の最新技術にも触れる大変貴重な経験により多くの刺激を得ることができました。また、異業種の使節団メンバー間においても新しいネットワークを持つことができ、これらを今後の学会活動やエンジニアリング活動に生かして行きたいと考えています。

また、本事業は来年度以降も続けられる予定とのことから、是非とも多くの後輩会員に参加のチャンスを掴んで頂きたいと思います。

 

参考文献

1) 発展的改革委員会、舶機誌、35-4 (平12-4)、231

2) 会告、舶機誌、35-3 (平12-3)、i

3) 青木雄二郎、舶機誌、35-5、(平12-5)、291

 

 

 

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