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Hello Firefighter

 

女優 桃井かおりさん

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“思わず涙が出ました”

 

猛火の中を逃げまどう母と子。「こんなところで死にたくない」と桃井かおりさんが叫んだ。フジテレビ系で三月二十三日の夜放送の「少年H〜青春編〜」で、桃井さんは空襲で火の海となった町を、火の粉をはらいながら突っ走っていく。「少年H〜青春編〜」は、一昨年秋に放送された「少年H」の続編。舞台芸術家妹尾河童さんの自伝的小説をドラマ化したもの。子供の目でとらえた戦前・戦中・戦後を描いている。前作は妹尾肇少年の小学生時代が中心だったが、今同は中学生となった五年間が描かれる。

今回のクライマックスシーンが、空襲場面。「通り一面が燃えています。その中をたっぷりと水を含んだ重いふとんで身を守りながら夢中で走りました。熱いし、怖いし……。本気で祈りました」。桃井さんは髪の毛をこがした。

空き地に小屋などを十軒建てたオープンセット。ここでの撮影、用いた灯油は四百リットル。家に火がついた。十メートルも火柱が立ち大規模な火事シーン。桃井さんの息子役尾上寛之さんも「爆風がすごかった。本当に死ぬ思いでした」とリアルなシーンを振りかえる。

このリアルな立体的セットを手掛けたのは映像京都の西岡善信美術監督。映画「吉原炎上」で、吉原を燃え上がらせた人だ。「空襲や焼け跡シーンはコンピュータグラフィックスを使いすぎると荒さが目立つようになる。自分も戦争を知っている世代だからウソはやりたくない」。ということから桃井さんを震え上がらせた迫力ある空襲シーンを再現させた。

焼け跡も廃材を焼いた本もの。父親役の中井貴一は、この焼け跡に立ち、「役者を本気にさせてくれるセット。焼け跡で別れ別れになっていた家族と出会った時自然に涙が出てきました」と言う。

戦災シーンを撮り終えた桃井さんは、「やっと危機を生き逃げた感じ。私も思わず涙が出ました」。戦争の空しさ、火の怖さをあらためて感じさせるドラマである。

(インタビュー:編集部)

 

 

 

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