日本財団 図書館


ルポ

 

本巣消防事務組合消防本部(岐阜)

018-1.gif

 

今回は、岐阜県の本巣消防事務組合消防本部を取材した。

当組合は、北方町長を管理者に本巣町、真正町、糸貫町、巣南町、根尾村の五町一村で構成されている。本部は北方町にあり、岐阜駅から名鉄揖斐線に乗り美濃北方で下車。岐阜県の西部に位置し県域をほぼ縦断する管轄区域は、北の福井県にまでいたる。

福井県境に位置する根尾村には、明治二四年に発生した濃尾地震によって生じた断層が保存されており、学術的にも高く評価され、国の天然記念物となっている。また、四月になると樹齢一五〇〇年を誇る淡墨桜(うすずみざくら)が見頃となり、多くの観光客が訪れる。

北方町には数多くの文化的遺産がある。「美濃の正倉院」とも呼ばれる円鏡寺には、明治神宮南桜門のモデルとなったといわれる桜門、空海作といわれる不動明王立像、運慶作と伝えられる金剛力士像など、数多くの国指定重要文化財がある。真正町には発祥を三〇〇有余年もさかのぼる、国の重要無形文化財の真桑浄瑠璃が伝承されている。さらに、真桑うりの産地としても知られている。

この地方は、全国的に有名な富有柿の産地で、糸貫町では町の木に制定されており、巣南町には富有柿発祥の地碑が建てられている。

本巣町は自然豊かな町で、全国初となったホタル保護条例が、昭和四七年に制定された。山の幸、川の恵み、実り多い大地と歴史ある史跡、伝統文化が調和した町である。

消防本部は昭和四四年、本巣郡五町消防事務組合として発足、昭和五〇年に根尾村が加わり、本巣消防事務組合消防本部となった。現在一本部・三署・一分署、消防長以下九五名の消防職員と三六六名の消防団員で、管内三九一・五一km2、人口約六万三千人に対する防火防災を担っている。

★管内二分

当本部の管内は、山林の占める割合が八三%にもなる。しかし、南部は岐阜市、大垣市と隣接している。そのため、両市に勤務する人々のベッドタウンとして市街地を形成している。山林火災対策に力を入れ大型の立て看板を設置するなど、山林保有者に対し啓発活動を積極的に行い成果を上げている。一方、市街地では中高層建築物が増加、これに対応するために、平成一三年度には三五m級のはしご車を導入する予定である。

★意識の高い住民・事業所

濃尾地震の記憶は薄れていない。平成四年、根尾村に開館した地震断層観察館は、被害の大きさを伝えると共に、住民たちに備えに対する意識の高さをもたらしている。

町会・自治会ごとに実施する防災訓練は、全町会等が三年に一度の割合で行えるよう順次実施している。その成果もあり、火災は初期に消火され、被害が少なくて済んでいる。

事業所は「自分たちの職場は自分達で守る!」(防火協会)、「災害は未然に防ごう」(危険物安全協会)とスローガンを定め、積極的に防火・防災にとり組んでいる。初期消火競技会を毎年開催し、消火器・屋内消火栓・小型動力ポンプの操法を競い、上位チームを表彰している。

★幅広い視野を持つ人材の育成

棚橋消防長は「消防を取り巻く情勢は厳しく、乗り遅れずに組織目標を達成しなくてはならない。特に救急の高度化には苦労した。高度化する業務に対応するには、人事管理が重要だ。人材育成と能力開発によって対応している。幅の広い視野を持った職員を育成し、住民サービスに生かしたい。

『自分を大事に』をモットーにしている。友を作り、家庭を大事にしてもらいたい。そして火災予防に徹してほしい。今後とも住民サービスに努め、独居老人の防火診断等、高齢者に対する安全確保を進めていく。」と熱く語られた。

(佐伯英夫)

 

018-2.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION