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第二三回全国消防職員意見発表

―全国消防長会―

 

六月一日、神戸市の「新神戸オリエンタルホテル」において、第二三回全国消防職員意見発表が行われた。全国九支部から厳正なる審査を経て選ばれた一〇人が、それぞれ職務を通じて体験したことをもとに、消防防災に関する決意・抱負・提案等積極的な意見を発表した。

消防関係者等約一、〇〇〇人が各発表者の熱のこもった意見発表に真剣に耳を傾けていた。

審査は、発表内容・意見性・発表力の項目について総合的に行われた。

審査の結果、最優秀賞には関東支部(東京消防庁)の遠藤さをりさんが、優秀賞には中国支部(広島市消防局)森田次郎さんと北海道支部(札幌市消防局)大平拓司さんが選ばれた。

最後に審査委員長の小森星児神戸山手大学学長は「甲乙つけがたい意見発表であり、大変、感銘を受けました。私自身、五年前の阪神・淡路大震災の直後、神戸市が消防マスタープランを作成したときに委員長を努めましたが、その際に、全国各地から寄せられた力強い励ましと献身的な努力に大変感銘しましたが、本日皆様の意見発表を聞いて、改めて消防の仕事の重要性、安心できる街づくりに果たしていかれる熱意に強く感動をしました。特に、天職としての人命救助に目覚めていく過程に感銘しました。」と講評を述べられた。

ここに最優秀賞に輝いた遠藤さんの発表内容を紹介します。なお、優秀賞の二作品は次号で紹介いたします。

審査員(順不同、敬称略)

小森星児(神戸山手大学学長)

古山桂子(神戸市教育委員会委員長代理)

山口一史((株)ラジオ関西代表取締役社長)

三品秀夫(川崎市消防局長)

本城光一(大阪市消防局長)

斉藤重義(福岡市消防局長)

 

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最優秀賞

「制服は着ていなくても」

関東支部代表 遠藤さをり

「どうしよう」あゝ、またそんなことを考えてしまった。「どうすべきか」を私は知っているはずなのに。

朝の通勤ラッシュの電車内に放送が響いた。「車内に気分の悪くなられたお客様がいらつしゃいますので、しばらく停車します。」そして、私の乗っている車両の前にあるベンチに、駅員に抱えられた高齢の女性が運び出されて行くのが見えました。連れの女性は、泣きだしそうな顔でオロオロとするばかり。「どうしよう、行くべきか」一瞬戸惑いました。その戸惑いを恥ずかしく思いながらも、どこか迷いを振り切れぬままに、私は電車を降りベンチに近づきました。「どうしましたか」声をかけた私を、連れの女性がほんの少し安心したかの表情を浮かべて振り返りました。その表情を見て、私は大切なことを思い出した気がしたのです。

消防学校を卒業して間もない頃、よく凄惨な現場の話しを聞かされました。

 

 

 

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