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消防庁長官 鈴木正明

 

「ほのお」通巻三〇〇号に寄せて

 

全国消防協会の機関誌「ほのお」の記念すべき三〇〇号の発行に対しまして、心よりお祝いを申し上げます。

本誌は、昭和五〇年七月に創刊されて以来、二四年余りの長い年月の間、消防職員の情報交換誌として全国の消防職員の方々に愛読されてきました。

これまで編集に携わってこられた皆様方の御労苦と、消防防災行政の発展に対する本誌の多大なる貢献に、心より感謝を申し上げます。

我が国の消防が、戦後自治体消防として再発足してから今日までの間、社会・経済や国土の構造は著しい変化をみせ、住民の生活環境も劇的な変貌を遂げました。これに伴い、災害・事故の態様も複雑多様化・大規模化し、その被害は平成七年の阪神・淡路大震災にみられるようにますます甚大なものとなっています。一方、我が国の生活水準が全国的に向上したことなどにより、住民の安全・防災に対するニーズは、都会であっても地方であっても同じようにハイレベルなものになってきています。このようなことから、消防防災行政の分野においても、消防本部間の相互協力体制の強化はもとより、他の行政分野、さらには地域住民や企業など幅広い地域社会との間の「連携」の必要性が飛躍的に高まっています。こうした「連携」を強化することにより消防を中心とする総合的な防災体制が整備され、ひいては消防防災行政が地域住民に対し、より大きな責任を果たすことができるようになると考えられます。

このような、消防・救急・救助・防災などに対する住民のニーズの高度化や災害の大規模化・複雑多様化に対しては、機動力やネットワークの整備をベースとして、地方自治体の区域を越えた消防応援、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて創設された「緊急消防援助隊」の活動、各都道府県に一機以上とほぼ全国的な配備が完了しつつある消防・防災ヘリコプターによる「広域航空消防応援活動」など様々な「連携」によって対応しようとしているのが、現在の消防防災体制整備の基本的な方向であると言えます。

更に、外国の大規模災害に対しても、「国際消防救助隊」の派遣など、国際機関や各国政府のそれぞれの機関が密接な連携を取り合うことはもちろん、非政府機関(NGO)などとも連携しながら救助活動や復興活動に協力し合うことが、既に日常的に行われるようになっています。

このように「消防連携の時代」に入っていると言えますが、新世紀に向けて、私ども消防防災行政に携わる者としては、様々な面における「連携の充実・強化」を一層進めることが必要です。更に、情報技術革命に対応し、インターネット技術や地理情報システム(GIS)を利用した高度防災情報通信システムの構築、救急業務へのヘリコプターの積極的な活用、技術革新に対応した規制改革の推進など、時代の変化に即応した、消防防災体制の一層の充実強化を図り、消防の使命遂行に万全を期さなければならないと考えております。

さて、本誌について申し上げますと、「消防最前線」では、全国の消防の第一線において発生した様々な火災や救急・救助の事例等が詳しく紹介されており、これは、消防の第一線で消防防災業務に携わる者の参考となり、また、大変な励みにもなるものであります。

また、学識専門家による具体的な法令等の解説、全国各地からの写真と一体となった新鮮な情報など、消防防災行政を進める上で、大変役立つ内容が盛り込まれ、本誌は、消防職員の教養研究誌として、重要な役割りを担っているものであります。

通巻三〇〇号という大きな節目を期に、今後、一層の研鑽を積まれ、消防教養専門誌の雄として、ますます内容を充実していかれますことを期待いたしまして、私のお祝いの言葉とさせていただきます。

 

 

 

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