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平成一一年度消防に関する論文 最優秀作品

熱・煙複合光電式スポット型感知器による非火災報対策について

京都市消防局 重藤保

 

はじめに

自動火災報知設備は、火災を早く確実に感知することで、被害の軽減につながる非常に有効な設備である。しかし、火災以外の要因によりひんぱんに作動する場合は設備への信頼性を失い、その結果常時ベルを停止しておくなどの誤った使い方がなされ、火災の拡大を招いて財産損失や生命の危険を増幅することにつながる。このことから自動火災報知設備の非火災報対策は重要な課題である。

これまで非火災報対策の有効な手段として複合又は多信号式と呼ばれる二つの原理を併せ持つ感知器等が考えられてきた。今回は、従来になかった原理により火災発生時の熱及び煙を同時に感知する複合型感知器を開発し、併せて非火災報対策の有効性について研究するものである。

 

一 非火災報の実態と問題点

最初に、本市消防局において平成七年度から平成九年度までに蓄積された非火災報データを分析し、その結果に基づき複合型感知器の有効性を検証することとした。

(一) 非火災報件数の推移

図1に示すように、判明しているだけで平成七年度は一九二件、八年度は二〇九件、九年度は一七一件と、平均一九〇件で、市内の設置事業所数が約一五、八〇〇であるから年間約八〇事業所で一回は非火災報が発生しており、判明していない件数を考えると決して少ない件数ではない。

(二) 原因別発生率

図2に示すように、各年度とも「不明」が最も多く、原因の判明している上位順は「調理の煙」、「急激な温度上昇」、「燻煙殺虫剤」、「漏水の侵入」となっており、この傾向は各年度においてもほぼ同様であった。

(三) 感知器種類別発生率

図3に示すように、「不明」が最も多く、判明している感知器上位の順は「光電式煙感知器」(二六%)、「差動式熱感知器」(一三%)、「イオン式煙感知器」(九%)、「定温式熱感知器」(七%)であり、この傾向は各年度においてもほぼ同様であった。

(四) 用途別発生率

図4に示すように、共同住宅(五項ロ)が最も多く、次に複合用途対象物(一六項イ)であった。

用途別原因としては、共同住宅では自動火災報知設備に対する関係者の知識欠如によるものであり、複合用途対象物は用途変更が多いことによるものと推測される。

(五) 上位非火災報原因と感知器との関連(事案からの検証)

ア 「調理の煙」について

対象物では共同住宅に設置の煙感知器から多く発生している。

(事案) 共同住宅の炊事場で調理中に発生した煙が換気扇により戸外に排出されたため廊下(通路)部分に設置の煙感知器が作動したことによるもの

 

 

 

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