「火の国の大空焦がせレスキューSPIRITS!!」をスローガンに、第二九回全国消防救助技術大会が去る八月一八日、熊本市総合屋内プール(アクアドームくまもと)において、鈴木消防庁長官をはじめ多くの来賓を迎えて盛大に挙行された。
この大会は、全国の救助隊員が一堂に会し、日頃鍛え抜いた消防救助技術を被露するとともに、知識・技術を相互交換することにより、ますます複雑多様化、大規模広域化する災害現場活動に即応できる高度な救助技術と強靱な体力、精神力を養うために、昭和四七年から日本財団の助成を受けて毎年実施している。
この大会が、政令指定都市以外では初めての開催となる熊本市は、豊かな緑と清らかな水、さらには熊本城や水前寺公園といった名所旧跡に恵まれ、優れた伝統と文化を有する中核市として、「人にやさしく、地球にやさしい」を基本理念に発展を続けている。また、今大会は、熊本市のほか熊本県下の消防本部が一体となって大会を支える一方、目本赤十字社の特殊車両救護車、NTTのデジタル衛星車、陸上自衛隊の自浄式トイレ車が会場に配置される等地元防災機関の協力も見られた。
さて、大会当日は朝から時折小雨が降るという、これから檜舞台に立つ隊員たちにとっては少し不安な空模様となったが、旱朝より全国各地から応援に駆けつけた市民や消防関係者等約八、〇〇〇名で埋め尽くされた会場は、開会前から大きな期待と熱気に包まれた。
牛前九時、消防音楽隊の軽快な演奏に乗り各地区支部から選抜された九三九名の精鋭たちの入場行進が開始され、(財)全国消防協会副会長である斉藤福岡市消防局長の開会宣言で、二〇世紀最後の大会の幕は開けられた。
開会式では、国旗・大会旗・市旗の掲揚後、消防使命達成のため殉職された消防職員の御霊に対して黙とうを捧げ、続いて、池田(財)全国消防協会会長、三角熊本市長のあいさつ、鈴木消防庁長官(代理・野平消防庁審議官)、徳田(財)日本消防協会会長、潮谷熊本県知事、江藤熊本市議会議長の祝辞と続き、多数の方々からの祝電を代表して西田自治大臣からの祝電が披露された。さらに、大会審判長の田代北九州市消防局長による審判長指示の後、出場隊員を代表して熊本市消防局の染田光司隊員が力強く隊員宣誓を行った。
開会式の後、訓練開始までの間に陸上会場では「久蓮子古代踊り」の衰愁漂う舞いが、水上会場では約二五〇年前から伝わる「小堀流踏水術」が被露され、郷土色豊かな演技で緊張感溢れる会場の雰囲気を和らげた。
いよいよ訓練の開始である。全国から選りすぐられた救助の精鋭たちが、陸上、水上に分かれ、鋭い目つきで出番に向かう。会場の熱気に影響されたか、訓練が進むごとに徐々に天候は良くなり、“火の国くまもと”にふさわしい熱い訓練が繰り広げられた。スタート前の一瞬の静寂の後、訓練を行う隊員たちの俊敏な動き、強靱な体力、磨き抜かれた技に驚きと歓声が上がる。各隊員が訓練を終える度に、会場を埋め尽くした見学者や同僚から大きな拍手が沸き、まさに隊員と会場が一体となって訓練に挑んでいるかのようであった。
この模様は「地域衛星通信ネットワーク」により人工衛星を介して全国へ配信され、各消防本部等でも隊員たちの活躍が映し出された。会場周辺では、隊員が互いの健闘を讃え合う姿や再会を誓う姿が随所で見受けられ、救助隊員の友好の輪は一層大きなものとなった。
すべての訓練が終了し、未だ熱気と興奮がさめやらぬ会場では、先の全国高校総合文化祭で最優秀賞に輝いた熊本県立牛深高校郷土芸能部による「牛深ハイヤ節」が披露され、歯切れの良い音楽と息のあった陽気な踊りに熱気と興奮は大きな感動へと変わっていった。
閉会式では、池田大会会長から「規律厳正にして士気旺盛な練度の高い救助技術が披露され、本大会までの長期間、実践的な訓練の積み重ねに励まれ、その成果が遺憾なく発揮されたことに敬意を表する。今後も、地域住民の期待に応えられるよう、より一層の救助技術の錬磨向上に努めていただきたい」との講評があった。国旗降納に続いて、大会旗が道越熊本市消防局長から次回開催の池田東京消防庁消防総監に引き継がれ、堅い握手が交わされた後、道越熊本市消防局長が閉会を宣言すると「二〇世紀から二一世紀へ 来年東京で会いましょう」の横断幕が掲げられ、輝かしい二一世紀への架け橋となった第二九回大会の幕は閉じられた。
猛暑の中、会場設営及び大会運営に当たられました熊本市消防局をはじめ熊本県実行委員会に対し、衷心より感謝申し上げます。