また、具体的なチェックは、仕様として決定した支援内容を考慮して、作業及び機能に対する一般的なチェックリストによる各要素作業の評価により実施する。
作業に対するチェックリストの例としては、船研における航海支援システムの評価に用いたもの、HIBISCUS(ヒューマンシステムインタフェース評価手法ハンドブック)、HEAP(Human Element Analyzing Process. MEPC 42/16/1)等がある。(チェックリストについては、化学プラント用等調査要)
船研における航海支援システムの評価においては、システム評価は機器の信頼性評価と人間による主観的評価に分け、後者を中心に検討した。その際の評価項目には、システムの1]機能、2]ユーザビリティー、3]音声入出力、4]システム全体の安全性、5]コストの5つに分類され、評価項目が作成された。
HIBISCUSでは、人間と支援システム間でやりとりされる伝達情報とその認知過程での評価項目として整理されていた。このうち伝達情報は大別すると、プラントの構造や機能及びその因果関係に関する知識、状態量に関する情報、操作とその手順及び結果に関する情報、今後の作業に関する情報、注目させるべき情報の制御と分類できる。また認知処理過程も同じく大別するとプラントが動くイメージの形成、容易で誤りの少ない操作、状況理解支援、行動計画作成支援と分類できる。
そこで、これらの要素を加味したチェックリスト案を表3に示す。チェックは大別して「システムの機能」、「ユーザビリティ」、「総合安全性」の項目について実施する。「システムの機能」は設計仕様として与えられる機能の有効性についてチェックするもので、質問例の通り一般的な聞き方になるが、実際にはそれぞれの機能の内容に即してチェックを行う。「ユーザビリティ」は、支援を受ける際の作業の効率や負担と言ったものから取っつき易さや好ましさ等の主観的・感覚的評価も含まれる。こうした項目の評価は、従来特に航海計器の分野では行われていなかったが、少人数運航を支援機器を前提として進める場合、そのシステムが使われないのでは当直者の負担が今以上に増すことになるので、実際に当直者に受け入れられる物にするため、「ユーザビリティ」の評価が安全性評価の重要項目となる。また、「総合安全性」は、先に想定したシステム異常時への対応が作業全体を通して十分であったか?また、想定していなかった異常に対して対処するための余裕が十分であったか?をそれぞれ評価する。想定されたシステム異常時への対応については、作業環境条件も含めて異常事態が発生した場合の対処が、システムとして完備し作業全体を通して安全が確保できるかを評価する。また、余裕については、熟練者の経験に基づき、各要素作業に必要な余裕の種類とその量を主観的に求め、それが十分であることを確認する。
具体的な評価においては、各評価項目についてチェックリストの全ての項目について評価できない場合があるので、評価の目的にあわせてチェックの項目を取捨選択する必要がある。また、評価は、各評価項目について十分―不十分と言った絶対評価と、従来のシステムでの作業との比較による相対評価があるが、これも評価項目や評価の目的に沿って選択できる。具体的な評価例としては、内航タンカーに搭載された航海支援システムの評価例(1)(2)があるので参照されたし。
(1) 安全指向型単独当直航海支援システム開発と実証評価について(その2)、日本造船学会誌843号
(2) 1名当直を目指した操船支援システムとその評価、船舶技術研究所報告 第37巻第5号
5) まとめ
以上のような作業により、(1)対象作業の分析表、(2)ユーザーニーズ(使用環境条件やシステム異常時の対策を含む)と提供機能の対応、及び(3)各種支援機能に対する評価及び要素作業全体に対する安全性の評価結果を示したチェックリストが得られる。こうした作業をユーザとメーカが進めることにより、ユーザのシステムに対する理解が深まり、システムの誤操作等を防ぐ事が出来ると共に、より一層の安全性の向上が図れる。