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4-2 安全設計のための方策

1) マン・マシン系としての安全性対応

システムの安全性については定義がないので、大規模複雑系システムの安全性設計を行う際、この定義を指針として設定する必要性に遭遇する。システムは空間・時間(影響要因)の差異、環境(外乱)の変化、人間の不安定性のなかで使用されているので「システムの安全性」の定義として次の二つの性質を持っているものとする:

(1) システムを構成する要素に過誤があっても、システムの機能を失わない性質

(2) システムの機能を損なう可能性がある外乱に対して、その影響を防ぎ、システムの機能を失わない性質

船舶の操船システムにおける安全性をこの定義に当てはめてると、

(1) システムの構成要素である乗組員や機械とそれらのインタラクションに過誤があっても、船舶の本来の目的は果たされか、

(2) 衝突の危険がある見合い船との遭遇や、気象海象、航行環境などの船舶の機能を損なう外乱に対応して、これらの影響を船舶に及ぼさないシステムであるか、

等がシステムの安全性の問題となる。

なお、在来の船舶では、これらの外乱による影響を複数の乗組員の相互補完や役割分担で防いできており、それらの失敗、見落としにより船舶の機能が失われて事故が発生する出る程度(確率)は、結果として社会的に容認していることになっている。すなわちマン・マシン系としての船舶は、経験(教育訓練)と目の数を最重要視して、人間側の機能を並列に分担することによって冗長系を構成して信頼性を向上させて、安全性を確保している。

この方策を採用しても、現状として大事故が発生し・ヒアリハツトが頻発する。これにより、パイロットと船橋内のコミニュケーションシステムのあり方等にたいする基本的問題の解決策が求められている。インフラの不十分性、新技術を積極的取り入れない後進性が指摘されている。

尚、林善男/人間信頼性工学、海文堂、頁177にてSwainのTHERP方法の説明の中において、システム安全について次のような定義をしている。

「システムにおける構成要素もしくは構成要素間の欠陥によって生ずる災害の潜在性が排除され、システム全体が最適条件下にある保証」。

「最適条件下、とは、経済性と技術との合理性においてある程度の危険の許容に言及していることと推定できる。

目標の一つは、自動化システムによって乗組員の作業負荷を減らし、安全性と経済性を向上することである。しかし、乗組員の作業を単に自動化機器に置き換えただけの従来型の自動化システムでは必ずしも安全性は向上しないので、船舶を人間と機械が協力して航行するマン・マシンシステムとみなして、その安全性を評価し、改善していかねばならない。

 

 

 

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