タイの造船会社の95%は同族企業である。船体長30ないし40mの耐航性の高い木造漁船の建造に関しては豊かな経験と高い技術を具え、木船建造に関する限り、現図場から竣工に至るまで、工程全般を知り尽くしている。2000年は小型船建造/修繕事業者にとって、その伝統的事業形態を新時代にふさわしい形態に転換するのに好機となる。実際に存在する相違点は、材料の違いに過ぎない。すなわち木材でなく鋼材で船を造ることである。溶接工が必要になるとはいえ、従来の木造漁船建造のノウハウを鋼船に適用することは可能であり、したがってわが国としては鋼船建造への円滑な転換が可能と確信している。
(2) 工程
たとえ設計が世界最高であっても、その製品を生産する工程の効率が低ければ、他国の造船所と競合することはできない。海事振興委員会事務局(OMPC)はJODCの協力を得て造船業構造改善計画に着手し、これにより造船業のあらゆる側面が調査、検討の対象となり、適切な修正が加えられることになった。2000年に入って、まず造船工程のコスト効率向上に重点が置かれる。
(3) 設備
日本の国際協力事業団(JICA)の専門家がベンチマーキング分析を行った結果、造船所設備の改善が必要であるとされた。OMPCはこの分析結果を受け入れて、敷地が狭く、設備も老朽化したチャオプラヤ川沿いの小規模造船所の刷新計画に直ちに取り組んだ。実施される設備改善の内容は以下の通り。
・東部沿海地区に造船工業団地を建設し、小規模造船所の移転と刷新を図る。この移転は今後2年間で実施され、改善された設備によりコスト削減、資材フローの効率化と共に、時間を浪費し、付加価値を生まない作業の排除が可能になる。
6. タイ造船業の将来展望
現在のところ、タイ国内の造船活動の趨勢は、小型艇とプレジャー・ボートの建造を指向している。今年は需要が伸びているので、これにヨットやボートの建造事業者が潤うことが期待されている。しかしこの事業は、ヨットやボートに使用される他の補助的品目の輸入には高率の関税が課せられるので、専ら低賃金労働に依存している。しかもこれら小艇の建造に使用される材料は通常は樹脂や繊維で、その税率は30%にも達する。また船舶建造について一層高い基準を設定すると共に、各船のグレードに応じた品質と一貫した工作水準を確立することが必要である。これは船主ばかりでなく、政府機関からも求められている。
修繕船事業については、タイのヤードはあらゆる船種、船型の修繕需要に対応できるように整備され、質、価格とも、地域の他国と競合し得る位置にある。