造船能力が過剰なため、造船所は限られた国内船受注を奪い合い、そのため新造船価が低迷している。この状態が長引けば、生産性の低い造船所は存続が脅かされる。
・造船所と造船関連機器サプライアーの集中。この点では日本、韓国、中国の造船所が、為替変動、納期、輸送費などの要因から、競争上有利な立場にある。マレイシアでは舶用機器サプライアーの数が非常に限られているので、船舶の機器や艤装品などは、その大半を輸入に依存しなければならない。
・日本、韓国、中国の船主は、それぞれの国内造船所に発注する傾向がある。しかしマレイシアでは、船主は第1の選択基準として低船価を求めがちである。
・造船業は運賃、用船料の動向に左右され、その上下により受注がかなり変動することもある。
・熟練した本工、協力工の確保。
造船能力
Drewry Shipping Consultantsの1998年の統計によれば、商船建造能力は、2,300万トン弱である。日本が依然として最大の造船国で700万cgt弱の能力を保有し、韓国の新造船能力も急増して400万cgt前後と推計される。中国の年間建造能力は現在80万cgtとされる。
技術投資により生産性が向上し、能力は優に15-20%増大する。
建造量の70%は極東各地の造船所が分け合っている。
造船労働力
人件費が低い環境で操業している造船所は、コスト面できわめて有利な立場にある。設備が貧弱でも、人件費が低ければ造船所は受注を確保できる。
造船では円満な労使関係もきわめて重要である。マレイシアでは造船所と企業内組合の関係が良好で、争議による操業停止が生じることはない。
現在、造船に従事している労働力は約15,000名と推計される。労働力は高齢化が進み、汚い、危険、長時間労働という劣悪なイメージから、若年労働者を引き付けることがむずかしい。
為替レート
新造船契約は大抵の場合、米ドル建てで価格を契約日に固定して調印される。造船所側の自国通貨の対ドル価値は、競争上、大きな要因である。為替変動の影響は、個別の造船所が直接管理できる他のどんな費目よりも大きい。マレイシア通貨の価値が対ドル2.5リンギットから3.8リンギットに低下した時、リンギット建て契約を抱えていた造船所は甚大な影響を蒙った。