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要旨

統計の示すところ、高速フェリーの安全性実績は、他の輸送形態と比較して格段にすぐれている。

IMOが1996年に採択した高速艇(HSC)コードは業界全体に、また高速フェリーの設計と運航に多大な影響を及ぼした。一部の地域では船舶の安全性が改善されているが、新規則の条項の中には、果たして船舶の安全性につながったのかどうか、疑問の余地のあるものも多い。同時にまた、それらの条項は高速フェリーの建造費、運航費を大幅に押し上げている。絶対的な安全性を達成することは不可能であり、したがってリスクの確率と、それが現実化した場合の影響を評価し、合意された安全性水準を満たすように、それらのリスクについて体系的なアプローチが必要とされる。公式安全性評価法を採用すれば、新たな規則の制定と既存の安全規則の見直しに役立つものと思われる。これにより妥当な費用で、妥当な安全性水準を達成しやすくなるはずである。

 

IMO・HSCコード-造船業界としての見解

高速艇の安全性に関するIMOコード(HSCコード)が導入されてから、すでに3年が経過しようとしている。このコードは以前の動的支持艇の安全性に関するIMOコード(DSCコード)に取って代わったものである。DSCコードの長さは約30,000語であったが、新IMO・HSCコードはその2倍の70,000語となっている。このコードは復原性、火災、救命、航海など、安全性のあらゆる側面を対象とするもので、さらに初めてISMコードと連携して、高速フェリー・オペレーターにさまざまな規制を加えるものである。コードの対象は国際航海に従事する船舶であるが、多数の国ではその全体または一部を国内航路にも適用している。

 

安全性に及ぼす影響

HSCコードの対象領域では、高速旅客フェリーの安全性水準が向上しているところも多い。しかしながら、新規則の対象領域の中で、果たして船舶の総合的安全性の改善に寄与したか否か、きわめて疑わしい領域も少なくない。同時に高速フェリーの建造費、運航費を大幅に押し上げ足り、その運航を複雑化させている面もある。主船室にスプリンクラー装置の設置を義務づけたのも、その1例である。多数の船室がある通常型フェリーと異なり、高速フェリーには広いオープン・スペースがあって、そこには常に船客や乗員がいる。したがって船室に火災が発生しても、すぐに検知し、対処することができる。スプリンクラー装置を設置すれば、船体長44mの船で、建造費は約80,000ドル増加する。

 

 

 

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